ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)の2021年春夏コレクションが、2020年11月24日(火)、東京・新荒川大橋下の河川敷にて発表された。テーマは“EMOTIONAL LANDSCAPES”。
3シーズンぶりのショーとなる、今季のケイスケヨシダ。不安を孕みもつ〈わたし〉という存在の輪郭を執拗になぞるような2020年秋冬の姿勢を半ば引き継ぎつつも、今季はその不安もろともに受け入れる力強い情熱が、この〈わたし〉がたしかに肉体をもって存在するのだというみずみずしい驚きがあふれているように思われる。
張りつめたような緊張感を湛える礼服を基調にしつつも、切れ目やデフォルメ、執拗なリボンにより身体の不確かさを仄めかした先シーズン。なるほど今季も、ショルダーやスリーブ、バックに裂け目を覗かせるピークドラペルジャケットなどが、そのコアを引き継いでいる。他方で、テーラードジャケットは前後逆に、絞るようにアレンジしてドレス風に。身体と衣服のフォルムが違いに引きつるようにして、タイトながらも独特のシルエットを生み出した。
先シーズンの製作の起点であった、古着のTシャツを解体・再構築したボディスーツは、今季は溌剌としたワンピースに。裾は歩みに合わせて軽快に揺らめき、鮮烈なピンクカラーや素肌を覗かせるスリットは生の力強さを印象付ける。また、ジャケットに施したスリットからはインナーの鮮やかな布地を引き出すなど、ヴィヴィッドな色彩が脈打つようにして生気を与えている。
古着をリメイクする姿勢は、今季はより自由に展開されている。たとえばコットン地から構築したトレンチコートは、元の衣服に配されていた大胆な柄を、フロントからスリーブ、ヨークに至るまで、存分に活かして。ボタンの代わりにベルトを配するとともに、随所にフリンジをたっぷりとあしらうことで、風に揺らめく軽快な歩みがいっそう引き立てられる。
また、礼服のシックさとは打って変わって、生地の質感も軽やかでカジュアルだ。サイドに広がるように布地を重ねたスカートにはデニム素材を。随所に施されたほつれやスタッズの加工も、コレクションの雰囲気をぐっとラフなムードへと引き寄せている。
ブラックが織りなすダークな雰囲気を通奏低音としつつも、はっとするように鮮やか色彩や柄が差し込まれた。軽やかに揺らめくチェスターコートには、ブラックを基調にオレンジのタイダイをのせて。サイドやバックにシャーリングを施したピークドラペルジャケットには、光沢感のある素材でオレンジを引き立てて。また、リボンを執拗に連ねたブルゾンや、フリンジをあしらったビッグサイズのジレにはチェック柄を採用。そうした鮮やかさや多彩さには、不穏さよりむしろ、〈わたし〉という存在を受け入れる力強い情熱が感じられた。