──サイ・トゥオンブリーを思わせるグラフィックも目を惹きます。
現代アートが好きで、これまでもドナルド・ジャッドなど、いろいろなテーマを盛り込んできました。今季のグラデーションのジャカードはアーカイブを再解釈したものですが、これは杉本博司の写真をイメージしていますし、トゥオンブリー風のプリントも、これまでに何回かコレクションで発表しています。
──トゥオンブリーの作品のどういったところに魅了されますか。
子供のような自由感でしょうか。あと、空間に合うという点です。トゥオンブリーのアートは、それを展示する空間を全部持っていってしまうことがなく、馴染んでくれるんですよ。一方でジャッドには、研ぎ澄まされた空間を作らなくてはいけないというように、合わせる難しさがあります。ヴィンテージにも合うようなところは、トゥオンブリーの優しさだと思います。
──アートとファッションでは、価値の捉え方がまったく異なっているように思われます。
今、洋服は大量生産されていて、どんどん使い捨てのような状態になっています。かたや、現代アートはものすごく高い値段で取引されていて、価値が高まっていますよね。そのなかで、服があまりにもったいないことになっている、貴重な感じがしなくなってきているという思いがあります。
デザイナーやアーティストが思い入れを込めてしっかり作るものは、時代時代で残されていくべきで、その評価はもっと高くなるべきだと考えています。アートや一部ヴィンテージのインテリアは、高価なものになって大事にされている一方、服はまだそこまでの地位を獲得していません。一部はありますけどね。だからこそアタッチメントのデザイナーを退任しても、大量生産の服とは相反するようなもの作りをもっとやりたいとは思います。
──今後、アタッチメントのデザイナーは、ヴェイン(VEIN)の榎本光希が務めることになります。
榎本も面白いことやっているので、ヴェインとアタッチメントと一緒に、頑張って伸ばしていってほしいです。
今の若いデザイナーを取り巻く状況は、アタッチメントが約20年前に出てきた頃とは違っています。当時は、やり出したらなんとなく目立つというくらい、デザイナーが少なかった。でも今は、デザイナーの数が多く、出ても埋もれてしまうような時代で、そういったなかで力を発揮しなければいけません。
一方でうまく力を発揮できれば、次のデザイナーにとってはチャンスだと思うので、それを大いに活かして、新しいことをやってほしいと思います。
──次世代へと継承してゆくということですね。では、ご自身の展望をお聞かせください。
自分自身は今後、先ほどお話ししたような、「服の価値」をもっと突き詰めていくような活動をしたいです。50代後半にさしかかって、デザイナーの人生最後にどんな良い仕事ができるか。もちろん、命をかけて一生やり続けるという選択肢もありますが、今ここで一回リセットして、新しいチャレンジをしたいです。