アタッチメント(ATTACHMENT)の2022年春夏コレクションが発表された。
ブランド創設者である熊谷和幸がデザイナーとして手がける最後のコレクションとなる、アタッチメントの2022年春夏シーズン。ゆったりとしたサイズ感を基調に、都会的なモード感やリラクシングな抜け感を漂わせるウェアを展開する。
テーラードジャケットやブルゾンといったベーシックなアイテムは、ストレッチの効いた素材を採用しつつ、ドロップショルダーでリラクシングなサイズ感へ。テーラードジャケットは、フロントに大胆なタックを施し、その間にポケットをあしらうなど、ギミックとフォルムの協奏が際立つ。デニムをはじめとするパンツも、ワイドながらテーパードシルエットに仕上げた。
素材には、自然素材も多く採用。シャツにはシルクを使用し、表情豊かなシワ感と上品な光沢感を生みだした。一方、ブルーの発色が鮮やかなブルゾンには、リネンにアセテートを合わせることで艶やかな光沢感を加え、ノスタルジックなムードにフレッシュさをプラスしている。
また、リネン素材をベースとしたジャケットやパンツは、フロントとスリーブを合皮調に仕上げることで、軽やかながらも素材感のコントラストにより都会的な表情を漂わせた。
現代アートから着想を得たウェアも、ミニマルなムードに自由な息吹を吹き込むかのよう。リネン素材のブルゾンやハーフパンツには、戦後アメリカの抽象表現主義の画家、サイ・トゥオンブリーの作品をイメージしたグラフィックをのせて。また、モノトーンのバイカラーをグラデーションで表現したジャカードは杉本博司の作品に着想を得ており、アーカイブピースの再解釈となっている。
20年以上にわたってアタッチメントのデザイナーを務めてきた熊谷和幸にインタビュー。今季のコレクションの製作や、退任にあたっての思いについて話を伺った。
──アタッチメントのデザイナーとして手がける最後のコレクションでした。何を意識して製作されましたか。
コレクションラインであるカズユキ クマガイ(KAZUYUKI KUMAGAI)の要素を抽出しつつも、ゆったりとしたサイズへと作り変えて、今の自分の好きなムードを盛り込んだコレクションになっています。
アタッチメント自体は、近年では都内に店舗を出してきているということもあり、都会で働く男性にとって着やすい、スポーティーでストレッチがきいているビジネスカジュアルスタイルを提案してきました。一方、カズユキ クマガイは比較的モード寄りで、その点でアタッチメントと相反するところがあります。今回のコレクションでは、カズユキクマガイで培ってきたモード感を、アタッチメントにプラスしました。
素材面では、シルクやウール、リネンなどの自然素材を中心に採用して、着心地の良さにこだわっています。働くワーカーのためというより、大人のリラックスした洋服を提案したいという思いがありました。
──アーカイブを再解釈したピースもありますね。
はい。僕の作り方には、リサイズしたり、ミックスしたりという「モデル替え」をしていくような側面があるのです。今回は、今までアタッチメントが培ってきたテクニックに、ゆったりとしたフォルムをどのようにして盛り込めるか、という視点で作っています。カットも独特です。
──テーラードジャケットも、大胆にタックをとったフォルムが特徴的です。
すごい立体裁断で。そういったギミックが好きで、時代ごとに色々やってきました。とはいえ、20年以上コレクションを発表しているなかで、サイズ感は細身であったり、太くなったり、ちょっと大きくなったり、小さくなったり、というのを繰り返していてはいますが、根幹にあるものは大きくは変わっていません。
──フォルムを作る際の起点にあるのは、やはり着用時の身体的な感覚なのでしょうか。
着心地は絶対的に意識しています。やはり、動きにくいものを作ろうとはまったく思わないです。たとえば、袖の太さを出したいとしても、単純に袖を太くして肩を落とすと、腕がなかなか上がりにくい。単に流行を取り入れるような見た目の問題ではなくて、そこに動きやすさや身体の機能をどうやって持ち込むのかという工夫をするのが、成熟したブランドとしてなすべきことだと思います。そうして、少しでも違いがわかっていただけるとありがたいです。