ヨウジヤマモト オム(Yohji Yamamoto HOMME)は、2022-23年秋冬コレクションを発表した。ランウェイには、松重豊、伊原剛志、仲村トオル、加藤雅也、三原康可らが登場した。
写真機が登場した19世紀初頭に遡り、古い写真に写る男たちの洒落た着こなしを着想源とした今季は、全体的にクラシカルな雰囲気が漂っている。
ジャケットやコートにベスト、パンツのスリーピース スタイルのセットアップのルックは、ゆとりを持たせつつも身体に沿うような仕立てのアイテムが目立つ。上品な光沢のあるウール地やストライプ地から、生地表面にほつれを生み出すカットジャカード、部分的にレオパードプリントを施したテキスタイルなど、様々な生地を用いてセットアップが仕立てられているが、いずれもどこか静けさをまとっている。
また、小物使いがクラシックな雰囲気やエレガントさをより一層際立たせている。ロングコートにスカーフを巻いたルックをはじめ、片眼鏡のサングラス、レースアップのレザーブーツ、ミニマルな一枚革のメッセンジャーバッグなど、古い風景を彷彿させるアイテムが登場。ベルベットのセットアップに合わせた、ブラックのチェーンで形作られた仮面をはじめ、十字架、指輪といったアクセサリーはリーフェ ジュエリー(RIEFE JEWELLERY)のクリエイティブ・ディレクター春井里絵が手がける「ヨウジヤマモト バイ リーフェ」によるものだ。
今季のキーアイテムとなるのはシャツ。胸元に装飾を施したシャツや、レザー素材のシャツ、襟や前立て部分に遊びを効かせたシャツなど、多彩なバリエーションで登場している。中でも目を引くのは、白いシャツとパンツを合わせた5体のルック。何年も着込んできたかのような表情豊かな風合いと、柔らかく身体を包むシルエット、そして、不均一に布地を重ねた前立てや、2枚着ているかのように見える二重の襟といった細やかに施された装飾によって、シンプルながらも存在感のある佇まいを演出している。
ロールアップした裾から異なる生地が見える“二重のパンツ”も散見されたアイテム。無地×チェック地、黒×ネイビーなど、あえて異なる性質の生地を重ねることで、生地の個性や主張をそれぞれ引き立てながら1本のパンツに仕立てているのが印象的だ。
時の経過を感じさせるエレガントな空気感に加えて、どこかデカダンなムードに覆われているのもポイント。砂のような色味のロングコートには、ポーランドの画家、ズジスワフ・ベクシンスキーのアートをプリント。生地全面にプリント、もしくはコラージュで落とし込まれた絵画は、退廃性と見る者の目を引くメランコリックな美しさの両方を兼ね備えている。
また、無骨な黒のウール地で仕立てたロングコートは、バックスタイルに白のステッチであしらわれたメッセージが並ぶ。「もうガマンしなくていいんです。」など、遊び心がありつつ退廃的なニュアンスを含む言葉選びもまた、余韻を残していく。