ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON) 2022年秋冬メンズコレクションが発表された。故ヴァージル・アブローが生前に手掛けた最後の物語は、会場に設置されたワンダーランド「Louis Dreamhouse」を舞台にスタート。夢や魔法が交じり合う幻想的な世界が、ルイ・ヴィトンで共に活動してきたクリエイティブチームとコラボレーターたちの手によって実現された。
まだまだ記憶に新しい2019年春夏コレクション。メゾンの舵を切り、新たな歴史を紡いできた故ヴァージル・アブローは、当初から一貫して、子供の純粋な目で世界を見るという彼の哲学をコレクションに反映してきた。社会の枠組みにはまらず、“限界”のない自由なスピリットで描くのは、洋服の機能やジェンダーなど、あらゆるコードの境界線を越えた型破りな世界。その純粋なエネルギーが閉じ込められたコレクションの数々によって、改めてファッションの楽しさや喜びを私たちに思い出させてくれた。
そんな彼が描く8つ目の物語であり、──そして誰もが予想しなかった最終章。今シーズンは、魔法使いや死神、動物といったプレイフルなモチーフが目立ち、これまでよりも一層ピュアで無邪気な子供らしい視点が感じられる。
ランウェイのパフォーマンスも独特で、長いダイニングテーブルに腰かけるオーケストラの生演奏をバックミュージックに、アクロバティックな動きを繰り広げるモデルたち。まるで時間を巻き戻し/早送りにしているかのようなユニークな動きも特徴で、そこはまるで時間の概念さえも超えた異空間のようだ。
コレクションを交差するのは、これまでも彼がその洋服が持つ<コード>の意味を探求してきたジャケットスタイルと、ストリートスタイル。とりわけジャケットスタイルのデザインが豊富で、鮮やかなワンカラーで統一したものをはじめ、花柄、艶めくサテン、ベルベット、レース付きなど、あらゆるテイストのデザインが登場。
なかには、写実派のギュスターヴ・クールベによる作品「The Painter's Studio(画家のアトリエ)」と、初期のシュールレアリストであるジョルジョ・デ・キリコによる作品「Souvenir d’Italie」も、ジャカードのような織地で表現され、ひと際異彩を放っていた。
ルイ・ヴィトンのシグネチャーは、テキスタイルを超えて、網目模様のユニークなピースの上へ。細いシルエットで身体の動きを制限しているようにも見えるが、まるでレースのように繊細で軽やかな空気も同時に纏っている。ランウェイでは、オールブラックコーデにレイヤードすることで、浮遊感のある不思議な表情を描き出していた。
ランウェイのラストは、ホワイトルックが席巻。中には、純粋な子供たちを象徴するかのように、大きな天使の羽をつけたモデルたちも現れる。そして時には繊細なヴェールを頭から垂らしていらり、ふんわりとしたチュールスカートを纏っていたり。その自由でピュアで、何ひとつルールに縛られない純白のファンタジーは、永遠に色あせることなく、私たちの記憶の中で生き続けるだろう。