2013年10月15日(火)、パッチーケークイーター(Patchy Cake Eater)の2014年春夏コレクションが発表された。「ルパン三世がプライベートで遊びに行く時のスタイル」を想像して作ったという今回のコレクションには、大人の男ならではの遊び心のスパイスが効いていた。
赤いライトで彩られた、妖艶な雰囲気の薄暗い会場。そこに突然、銃声やサイレン、とらえどころのない音楽がけたたましく鳴り響き、あたり一面に煙が立ち込め、ショーがスタートした。
ファーストルックは光沢のある生地の、クラシックなテーラードのセットアップ。生地の強烈なインパクトを、細身のカッティングでトーンダウンさせている。「こてこてのモッズ・ルックになりすぎないように、今っぽさをミックスして、丁度よいところで楽しめるスタイルを目指した」というデザイナー森野重紀。その言葉通りどのルックにも、どこかリラックスしたスポーティー感のある要素が取り込まれている。
カラートーンは、黒・白・グレー・ベージュと全体的にベーシックで落ち着いた雰囲気。素材には、シルクやナイロンなど光沢のあるものが多く使われた。光の当たり方や角度によって見え方が変わるこれらの素材が、シンプルなスタイルに何通りもの顔を与える。
多くのルックに見られたのは、ハーフパンツにジャケットを合わせるスタイルや、セパレートのように見えるオールインワン。ジャケットを着ている時のかっちりとしたビジネスライクな印象と、それを脱いだ時に感じる開放感や爽やかさという、オンとオフの2面性を表現したのだという。仕事にも行けて、その後のプライベートもそのまま楽しめる、そんなスタイルを提案したかったという森野の意図が見事に体現されていた。
ズボンの裾をロールアップしてシューズを覗かせるような小物使いや、モデルのメイクは、アラン・ルドルフ監督の映画「モダーンズ」がインスピレーション源。ここでもソフトなモッズ・スタイルが意識されていた。
ショーの最後にはデザイナー本人も拳銃を手に登場し、ルパン3世の世界観を自ら表現した。着る人の感覚に寄り添って作られた今季のコレクション。仕事もプライベートも充実させている、それでいてルパン3世のようにミステリアスで、ちょっとひとクセありそうな、そんな大人の男のための春夏スタイルを提案する。