ストフ(STOF) 2014年春夏コレクションが渋谷ヒカリエで発表された。テーマに据えたのは、イタリア語で「植物学」を意味する「VOTANICA(※本来の綴りはBOTANICA)」。
緑がかった照明と吊るされた植物のオブジェとで森のような癒しの空間が演出され、どこかほっとする暖かみで会場は包まれる。花の蜜を吸うハチドリ、もしくは蜂だろうか、そう思わせる自由なダンスと共にショーがスタートした。
洋服には、植物の持つ心休まる魅力がしっかりと表現された。花などの様々な植物をはじめ、何かを想い出させる森の情景、アロハなどがメインのテキスタイル。総柄が多い中、植物が生い茂る母なる大地を彷彿とさせるアースカラーがリネンで表現され、全体に安心感を添える。リュクスな輝きを放つシルクのスカーフは今回新たに採用したという。途中登場した、エスニック調のステッチがあしらわれたMA-1とのセットアップは力強く、大空のようなさわやかなブルーで彩られた。
ポンチョ、丈の長いマウンテンパーカやニット、サルエルパンツなどの風を纏うリラックスしたシルエットと、ヘアメイクや小道具に取り入れられていた植物とが相まって、歩いてくるモデル達は森に住まう妖精のよう。どんぐりのような形の、ぼんぼんが付いたキャップもそう思わせた一つの要素だろう。「デザインソースは、旅に行った時に出会った森もあれば近くの公園だったり様々、日常に目を向けようと思った」とデザイナーの谷田浩が言うように様々な森や植物の様々な表情が見て取れる。
インビテーションに綴られていた「丁寧に生きたい、庭に咲く地味な花の名前を覚えているような」という詩が意味するのは、普段は意識せず通り過ぎている景色やものごとにもう一度目を向けようというメッセージだ。「テーマに至ったきっかけはない。逆にそこがポイントになっています」と語るデザイナーの谷田浩。ストフの作る洋服は静かでありながら、着る人はもちろん、その姿を見る人の心をも動かすような引力をもつ。