M A S U(エム エー エス ユー) 2023年春夏コレクションが、2022年9月1日(木)渋谷ヒカリエ ホールにて発表された。テーマは「ready」。
豪華爛漫なハリウッドの舞台を連想させる、“レッドカーペット”が会場に敷き詰められた今シーズン。コレクションのインスピレーション源となったのは、地球上でもっとも有名なポップスターのひとり、マイケル・ジャクソンだ。
最高のステージを演出する絢爛な姿と、パパラッチを避けて顔を隠して歩くプライベートの姿。──そのどちらもが紛れもなく本人であり、等しく魅力的に映ったというデザイナーの後藤愼平は、マイケル・ジャクソンのアイコニックなスタイルやカラーパレットの直喩に留まらず、相反するエッセンスを共存させるコレクションを、春夏の軽やかな素材と共に作り上げた。
そもそも、通常セレモニーの場として使用されるレッドカーペットだが、それも「たかが赤いカーペット」なのではないか…?と考えた後藤。会場作りからデザインを介して先入観に疑問を呈した、真っ赤なランウェイには、リアルとアンリアルの要素が次々と絡み合っていく。
例えばフォーマルなタキシードには、グランジのエッセンスをプラスし、スーパーワイドなスウェットや、ハーフパンツをスタイリング。たっぷりのフリルをあしらったドレッシーなシャツは、テックマテリアルで再構築し、ボタンの代わりにジップアップディテールを採用した。
マイケル・ジャクソンのステージ姿を連想させる、煌びやかな素材も今季ならでは。フーディーやボトムス、ひらりとなびくスカーフは、スポットライトにあたるたびに、ぎっちりと敷き詰められたスパンコールがギラギラと光る。またカジュアルなデニムには、色とりどりのビジューを配して。そしてコレクション全体のキーカラーとなるのは、もちろんスーパースターの彼を象徴する鮮やかな“レッドカラー”だ。
こうしたフレッシュな素材やカラーの選択だけなく、継続して使われる“変わらない”要素も印象的。ブランドらしいポップコーントップスは、今季ブルゾンやパンツ、バラクラバといった様々なアイテムにまで拡張し、春夏の軽やかなムードを助長。またフリンジやバイカーチャップス、トランスペアレントなオーガンジー素材に加え、クラッシュやほつれといったディテールからも、過去シーズンからのはっきりとした繋がりを伺うことができる。
ショーのラストは、大量に降り注ぐ紙吹雪と共にフィナーレ。キラキラと輝く紙吹雪は、もちろん今季のキーカラーである赤で、レッドカーペットをより華やかに塗り替えていく。観客の歓声の渦の中で、両手を広げて喜びをあらわにするモデルたち。固定観念にとらわれない自由で美しいステージこそ、後藤が作り上げたかった新しいセレブショーンの在り方なのだろう。