M A S U(エム エー エス ユー)の2023年秋冬コレクションが発表された。
今季のM A S Uがテーマとしたのは、「マリアージュ(marriage)」。フランス語で「結婚」を意味するこの言葉は、たとえばワインと食べ物の相性にも用いられるように、異なるもの同士が織りなす組み合わせの妙の謂いでもある。
互いに異なる世界に住まう物事の、意外な出会い──今季のコレクションでこうした「マリアージュ」を示すひとつの例が、ヨーロッパとアメリカ、アンティークとモダンという対比と結合であったという。
たとえば、コルセットの着用を念頭に置き、細くくびれたウエストラインを持つ「ヴィクトリアン・ジャケット」は、そのフォルムの面影を残しつつ、レザーのバイカージャケットにアレンジ。ロココ期の上流階級の男性が正装として着用したジャケット「アビ・ア・ラ・フランセーズ」のディテールは、ファブリックを大胆に切り替え、フロントボタンを連ねたブルゾンなど、現代の生活に溶け込むウェアに反映されている。
こうした異質なもの同士の出会いは、素材にも見てとることができる。艶やかなベルベット素材は、ボリューミーなパッファージャケットやムラ染めを施したベストへ。伝統的な有松絞りを彷彿とさせる凹凸状の素材は、アメカジテイストのブルゾンなどに。あるいは、きらびやかなビジューやスパンコールは、クラシカルなチェック柄のダブルジャケットやピンストライプのショートパンツなどにのせられた。
「マリアージュ」が生みだす組み合わせの妙は、時としてささやかなものであり、だからこそ劇的でもありうる。そのささやかさは、たとえばプリントやドローイングなどに見られよう。カジュアルウェアの代名詞ともいえるデニムジャケットには、そのバックに古典絵画に見られよう天使のグラフィックを。逆に、端正なメルトンのロングコートには、ネオンサインを彷彿とさせるグリーンを重ねることで、テイストの違いを浮かび上がらせている。