カルヴェン(CARVEN)の2014-15年秋冬メンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィークで発表された。
深いネイビーを基調とした、ダークトーンのスタイルが飾ったショーの序盤。キャップやジャケットに素材感の変化はあるものの、至ってシンプル、そしてどこか”ワル”な雰囲気漂うルックが続いた。フレンチシックを体現しつつ、モダンで、少しノスタルジックな近年のクリエイションからすると、これらは明らかに異なるものだ。詰めかけた多くのファンやジャーナリストたちの予想を、鮮やかに裏切った。
そんな今回のコレクションは、アメリカ警察の過去のマグショット、つまり逮捕者の顔写真からインスピレーションを受けている。そう聞くとなるほど、ブラックやオフホワイト、さらにはベージュやネイビーブルーと、古い写真を連想させるような色調が多い。
加えて登場したのは、古風な刺青などのモチーフや、狭い肩幅、大げさな襟といった20世紀初頭のクラシックなテイラースーツの要素。それらを盛り込んだピースが、シルエットやボリュームを変えて、次々と現れる。まるで映画のワンシーンに現れるようなギャングさながらの風格が、会場を満たしていった。
そうは言ってもショー中盤以降は、ボイルドウールやダブルフェイスのチェックツイード、細かなピンストライプといった、カルヴェンのエスプリ流れる、トラディショナルで上品な要素も散りばめられた。そこに見られるのは、1945年に始まったブランドの歴史を守りながら、時代をリードする創作を続ける、デザイナー ギョーム・アンリの姿勢。今最も注目されるブランドであるカルヴェンの可能性は、またひとつ、広がりを見せた。