マメ クロゴウチ(Mame Kurogouchi) 2023年春夏コレクションが、フランス・パリで発表された。今季、デザイナーの黒河内真⾐⼦の着想源となったのは、古代から⽇本⼈の暮らしと密接な関わりを持ち続けた“⽵籠”。籠そのものが持つ美しさ、緻密な編みとその中に仕掛けられた「間」を、衣服と人間の関係性に重ね合わせ、可視化したコレクションを展開する。
⽵籠にまつわるリサーチの中で、20世紀初頭に活躍した作家・飯塚琅玕斎による“花籠”に強烈な共感を覚えた黒河内。伝統的な唐物籠という安寧を超越し、芸術的主題へと昇華させた作品の数々は、本コレクションにおいて最も多くのインスピレーションをもたらしたそうだ。
その好例となるのが、琅玕斎が得意とした「束編み」を彷彿させるニットピース。プリミティブな要素を内包しながらも、ブランドとも縁の深い“編み”のテクニックを応用させることで、上品かつフェミニンなムードへと引き寄せている。またディテールも特徴的で、ポケット口や、ベルトループに施されたパイピングのフィニッシュは、“籠の縁”を想起させる仕上がりとなっている。
軽やかなシルクの楊柳ジャカードのピースや、シルクオーガンジーのトップスは、織りや刺繍で表現された⽵林柄と上品な透け感のファブリックにより、⽵そのものが持つ凛とした美しさを体現しているかのよう。特殊なマクラメ編みのドレスやベスト、スカートは、レイヤードにぴったりなアイテムで、その編み目の中には伝統的な竹ビーズも差し込まれている。
アイコニックなコード刺繍は、かつてない程精巧な表現へ。一枚でさらりと纏うキャミソールドレスやランジェリーの中には、セクシーさというよりも、緻密な編みと⼤胆な透かしによるリズムに、芸術的な美しさを見て取れるだろう。
カラーパレットは、ナチュラルトーンを主流に、⽵林を思わせるミントグリーンがアクセントに。囲炉裏の煙に炙られ、変⾊した煤⽵の持つ⾃然なブラウンのグラデーション、⽵の節の再現は、多⾊染めや筒状の⽣地に⽷を巻き付けて⾏う⻯巻絞りといった、伝統的な有松絞りの技法で丁寧に表現されている。
またアクセサリーも今季ならではのラインナップが勢ぞろい。真⽵を燻し、束編みの技法で作られたネックレスやピアス、イヤーカフに加え、⽵ビーズを使⽤したコードが付属するKIJIMA TAKAYUKIとのコラボレーションハットなどが展開される。