A.P.C.(アーペーセー)の2014 -15年秋冬コレクションの目玉は、何と言ってもカニエ・ウェストとのコラボレーションの第2弾だろう。デニム、ミリタリーの2本柱で構成されたコレクションは一見では非常にシンプルに見えるが、良く観察すると服好きなら思わずニヤッとしてしまう素敵なギミックが隠れている。とくに後ろ側に。
例えば、スウェーデンのM69をモチーフにしたミリタリージャケット。同系色のミリタリーパンツと合わせた正面からのルックは、夜道で絶対に合いたくないハードコアな風貌だが、ジャケットの後ろ側のヘムにはファーのインナーがひょっこり覗いている。1940年代のワークシャツの“ガチャポケ”のディティールが目を惹くデニムシャツは、フロント周りはちょっと洗練されたビンテージ風の雰囲気だが、後ろのヘムにはホワイトのパイピングが施されている。これだけで一気に洗練された雰囲気になるから不思議だ。
ティンバーランドのイエローブーツと最高のマリアージュを奏でる自然な色落ちのデニムパンツは、太もも周りをやや緩めにして膝上に弛みを持たせた今までにないバランスに仕上げている。90年代初頭のJクルーを連想させるユルい雰囲気のベージュのニットも、今の気分にぴったり合致する。
ファーストコレクションはジーンズ、Tシャツ、フードパーカーのカプセルコレクションだったが、今回のセカンドコレクションは日本でもフルラインで展開する予定(シューズは除く)。心して待たれたし。
一方のメインラインは、時代を牽引してきた人物のプライベートなスタイルにインスピレーションを受けている。その人物とは、イヴ・サンローラン、サミュエル・べケット、マルセル・プルースト、マーク・ジェイコブス、カート・コバーンの5人だ。シンプルなデニム、シャツ、カーディガンをタイドアップしてスウェードのブルゾンを羽織ったスタイル、ネイビーのスーツにコートを肩掛けしたスタイルは、サンローランにインスパイアを受けたもの。象徴的な長方形の眼鏡「Maison Bonnet」も、しっかり作り込んでいる。
サミュエル・べケット、マルセル・プルーストをイメージしたコレクションは、コートがポイント。ムートンのファーのコートはサミュエルの渋みのあるスタイルを連想させる。スマートにシャツとニットを着こなしたスタイルは、マーク・ジェイコブスの日常をイメージしたもの。ネルシャツにダメージデニムのルックは、言うまでもなくカート・コバーンにオマージュを捧げたものだ。
Text by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)