ディオール(DIOR)の2023年秋メンズコレクションから、トレマイン・エモリーのデニム ティアーズ(DENIM TEARS)がゲストデザインを手がける、初のカプセルコレクション「ディオール ティアーズ」が登場する。
デニム ティアーズは、シュプリーム(Supreme)のクリエイティブ・ディレクターを務めるトレマイン・エモリーが、2019年にスタートさせたブランドだ。今回、キム・ジョーンズによるディオールの2023年秋メンズコレクションの一部として、デニム ティアーズがデザインを手がけるカプセルコレクション「ディオール ティアーズ」を展開する。
デニム ティアーズが多用するのが、コットン素材だ。ヨーロッパの近代化を支えたコットン織物産業は、その背景に、アフリカからアメリカへのアフリカ人の輸出、そしてその労働力を用いてアメリカで生産されたコットンのヨーロッパへの輸出がある。ジャズをはじめとするブラック・カルチャーは、こういった土壌のもとに育まれたものだ。この意味でデニム ティアーズは、ブラック・カルチャーにおけるコットンの意味を、その根幹に置いているといえる。
こうしたデニム ティアーズが手がける「ディオール ティアーズ」コレクションの根底に流れるのが、アメリカとヨーロッパの対話である。デニム ティアーズを象徴するコットン素材を中心に採用しつつ、カジュアルなアメリカンスタイルに、フランスの精緻な技術を掛けあわせたウェアやバッグ、スニーカーを展開する。
「ディオール ティアーズ」コレクションを代表するアイテムが、デニムアイテムだ。アメリカのファッションを代表するものとして捉えられているデニムは、しかし、「セルジュ・ドゥ・ニーム(=ニーム産のサージ)」を語源とするように、元々フランスで生まれたコットン素材である。頑丈なこの織物は、開拓時代に労働着としてアメリカで大きく展開したのだった。
何よりデニムは、デニム ティアーズを象徴する素材でもある。「ディオール ティアーズ」コレクションでは、1950年代に着想したシルエットのデニムジャケットやデニムパンツなどを用意。ジャケットなどには、ジャカードにコットンの模様を抜染で施す一方、パンツには刺繍を施すなど、カジュアルなデニムウェアにディオールならではの精緻な加工を施したものとなっている。
また、「サドル」バッグやスニーカーなども、ジャカードにコットンのモチーフというこのコレクションならではの佇まいに仕上げた。
「ディオール ティアーズ」コレクションのもうひとつの着想源のひとつが、アイビーリーグにおけるのアフリカ系アメリカ人学生のプレッピースタイルだ。たとえばヴァーシティジャケットは、1950〜60年代にかけて人気を博したもの。オリーブグリーンとエクリュの配色で仕上げつつ、バックには濃密なロゴ刺繍を施している。
そのほか、チェックシャツやカレッジロゴ入りのニットなども展開する。
ジャズもまた、アフリカ系アメリカ人のブラック・カルチャーから生まれ、世界へと広がった文化のひとつだ。「ディオール ティアーズ」コレクションでは、アメリカからヨーロッパへと渡ったジャズミュージシャンにも着想を得て、クラシカルなウェアも用意。たとえばテーラードジャケットは、ほどよい厚みを持つファンシーツイードを採用し、ボクシーでありながらも縦のラインを強調したシルエットに仕立てた。