アンリアレイジ(ANREALAGE)の2023年秋冬コレクションが発表された。
今季のアンリアレイジは“=(イコール)”をテーマに、19世紀のドイツの哲学者で生物学者のるヤーコプ・フォン・ユクスキュルが唱えた「環世界」の概念を表現。人間が“見て”いながら“知覚していない”世界がある一方で、他の生物は人間とはまた違う世界を見ているとユクスキュルは言う。コレクションでは、“全く別の視点から見る世界と自分が見る世界は、決してイコールではない”という点にフォーカスし、等しく異なる世界を表現した。
毎シーズン斬新なショーの演出で会場を沸かせるアンリアレイジの今シーズンは、物事を見る際、人間は「可視光線」に、ミツバチやモンシロチョウなどは人間の眼では捉えられない「紫外線」の光に頼っていることに着目した演出を用意する。
ショーの前半は、白い衣服に身を包んだモデルたちが登場。会場のボルテージは、彼らが再び現れてから急速に盛り上がる。太陽光に含まれる紫外線にも反応するフォトクロミック材料を使用した、真っ白なウェアに紫外線を浴びせることで、色や模様を浮かび上がらせたのである。浮かび上がったカラーは、紫外線を浴びないと3分間で白い状態に戻ってしまうイエローやベージュ、レッド、ライトブルーなど。その色合いは刻一刻と強さを変える太陽光や天候によっても左右されるという。
シルエットは、“前後対称”にパターンカットされていたのが印象的だ。たとえばトレンチコートは、ダブルブレストで“表”を表したバージョンと、背中にかかるヨークで“裏”を表したルックが登場。それぞれのルックは、前後で同じデザインに仕上げ、後ろ姿であっても正面に見えるよう設計されている。
ルックに施された多様な装飾にも注目だ。サテンドレスには巨大なクロシェ編みの襟を配し、ジャンプスーツは全体を花柄レースに。また、襟にバラのコサージュを付け、袖にフリルを連ねたドレスなど、細かな部分にまでこだわりの詰まったルックが見られた。白から別の色へと変化させることで、よりディテールを際立てた。
アンリアレイジらしいグラフィックも健在。ストライプやチェック、水玉、繊細な花柄などが例としてあげられる。中でもアンリアレイジのロゴパターンは、テーラードやセットアップに施されたほか、モコモコとしたフェイクファーのコートやドレスにも織り込まれていた。