ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)の2024年春夏メンズコレクションが、2023年6月17日(土)、イタリア・ミラノにて発表された。
「身体との対話」と銘打ってみたとき、西洋の衣服が身体との張り詰めた関係性の裡にあることは、ひとまず自明である。織物や編物、あるいは皮革という平面的な素材を曲線的にカットし、組み合わせることで、凸凹とした人の身体をいかに覆うか、というのがそれである。ここに、身体と衣服の調和によるエレガンスが立ち現れる。
その代表格が、テーラリングにほかならない。今季のドルチェ&ガッバーナを概観したとき、まず、テーラリングが身体をなぞりつつも屈強に理想化していることが見てとれる。いかなるイメージか。ショルダーは力強く、ボクシーなシルエットであくまで程よい抜け感をもたらすというフォルムがそこには見てとれる。あるいは、半ばテーラリングを解体したようなジレは、構築と身体の関係を強調するものだろう。
では、西洋のテーラリングに対して、身体とのオルタナティヴな対話は何だろう。それをたとえば、東洋の衣服──二項対立として大雑把には過ぎるが──に求めることができる。これは、布地の平面を身体に纏うという意味で、西洋の衣服の曲線的なパターンとは対照的なものである。布地を纏うとき、身体との間にはある種の遊びが生まれる。テーラリングのソリッドなフォルムに対して、これはシルエットの可塑性を示す。そして今季のドルチェ&ガッバーナでは、ヴェールをカシュクールスタイルに交える、あるいはウエストに巻いてシルエットを引き締めるというように、身体との可塑的な対話がなされている。
上述の要素があくまで身体を覆い、そこで輪郭を描きだすことを試みるものであれば、シースルー素材はその下にタイトなトップス、あるいは身体を透かして見せることで、その輪郭を二重化するものだといえる。花柄のレースやシアー素材、あるいはスカラップ刺繍のシャツは、その模様でもって華やぎを添えつつ、その下に身体を仄めかすことで、官能的な対話が繰り広げられているのだ。
このような身体と衣服の対話が行われる場において、色彩はあくまで抑制されている。すなわち、白と黒を基調としつつ、時折りブラウンといったベーシックカラーに抑えることで、シルエットと素材を通じた対話が引き立てられているといえよう。