ネイティブ・アメリカンに認められたブランケットや、カラフルで暖かなウールシャツなどで知られるアメリカのブランド、ペンドルトン(PENDLETON)。イギリスからアメリカに渡った創設者トーマス・ケイによって設立された毛織物工場をルーツに、1863年に誕生したペンドルトンは、100年以上にわたって家族経営を続けてきた。その歴史とプロダクトの魅力について、創業家であるCEOのジョン・ビショップ(John Bishop)に話を伺った。
ペンドルトンは、1863年、イギリス人トーマス・ケイによってオレゴン州に設立された、アメリカ初の毛織物工場にルーツを持っている。1876年、ケイの娘ファニーが小売商のC・P・ビショップと結婚し、製造・小売を手がける企業として事業をスタート。1909年には、ビショップの3人の息子がペンドルトンのブランド事業を開始した。以後、アメリカの自社工場で、高品質のウール製品を作り続けている。
ペンドルトンというと、ネイティブ・アメリカン柄のウールブランケットを思い浮かべます。鮮やかな色柄で織られたこのブランケットは、その品質の高さから、ネイティブ・アメリカンにも認められることになりました。なぜブランケットの生産に乗り出したのでしょう。
ペンドルトンがネイティブ・アメリカンのためのブランケット生産に乗り出した背景には、大きく2つの理由があります。第一に、アメリカ西部・オレゴン州というベンドルトンの工場の場所であり、第二に、ネイティブ・アメリカンのサポートです。
オレゴン州にあるペンドルトンの工場は、ネイティブ・アメリカンの保留地と地理的に近い位置にありました。そこでペンドルトンは、ネイティブ・アメリカンのために、高品質のプロダクトの生産を始めました。それが、色鮮やかな柄のブランケットだったのです。
ネイティブ・アメリカンは、ブランケットをどのように使っていたのでしょう。
多くの場合は、衣服の外から被るローブとして使っていました。また、ブランケットのウール織物は、ほかの衣服に仕立て直すこともできます。ネイティブ・アメリカンが当時持っていた素材、たとえばレザーは、この点では便利とはいえず、身に纏おうにも快適なものではありませんでした。こうした素材に比べるならば、ペンドルトンの織物は、まさしくネイティブ・アメリカンが望んでいたものだったのです。
ところで、ブランケットの特徴のひとつが、鮮やかな色ですね。
色は、ネイティブ・アメリカンにとって大きな意味を持つものです。また、地域ごとに色の嗜好は異なっています。たとえば南西部では、ターコイズ、ホットピンク、チェリーレッドなど、明るい色を好む傾向があります。その一方、アメリカ中部のレイク・カントリーでは、ネイティブ・アメリカンの好む色のトーンは多少抑えられます。
こうした嗜好の違いに応じて、ペンドルトンでは同じパターンでもさまざまな配色でプロダクトを取り揃えてきました。例を挙げれば、ベストセラーのデザイン「チーフジョセフ(Chief Joseph)」は、1920年に発表されてから、16通りの配色で展開しています。色は非常に重要な要素なのです。
幾何学的な模様もまた、ペンドルトンのブランケットを特徴付けています。こうしたパターンは、ネイティブ・アメリカンの文化に由来しているのでしょうか。
着想源の多くは、アリゾナやニューメキシコなど、アメリカ南西部の文化から来ています。アメリカでも多くのネイティブ・アメリカンが住んでいるからです。とはいえ、ブランケットの模様は、必ずしも特定の文化的な意味合いを持っているわけではありません。わたしたちは、ネイティブ・アメリカンばかりでなく、幅広い人々に向けてプロダクトを作ろうとしたからです。
必ずしもネイティブ・アメリカンに固有というわけでもないのですね。
たとえば、三角や十字といった形は、ネイティブ・アメリカンにとって重要なモチーフではありますけれども、これは世界中であっても同じことです。思うに、人類は基本的な、幾何学的な形に反応しているのでしょう。
ペンドルトンを代表するもうひとつのアイテムに、ウールシャツがあります。2024年で誕生から100周年を迎えますね。
ウールシャツのエッセンスとは、質、そして伝統です。カラフルで軽量なウールシャツを生産するなか、ペンドルトンはその質に重きを置いてきました。実際、数十年前に作られたシャツであっても、製造当時と同じくらいに鮮やかで美しいというのが、高い品質を証明しています。
根幹にあるのが、ウールの質です。ウールとは、サステナブルで、快適で、清潔さを容易に保てて、臭いを抑えてくれるという、素晴らしい繊維なのです。
では、ウールシャツの「伝統」とは何でしょう。
世代を超えて受け継がれるということです。あるシャツが祖父から父、子へと贈られて、5代、ひょっとすると6代にわたって所有されて、今に至るのです。これは、単なる物のやり取りではありません。記憶の継承です。つまり、シャツを受け取った人は、それを贈ってくれた人へと想いを馳せることになります。おじいさんは、初めてのペンドルトンを買って、それを自分の息子にプレゼントしたのかもしれない、といったように。
記憶とは、ペンドルトンのシャツと、それを手に取る人を結びつける関係だというですね。
色柄や素材ばかりでなく、シャツにまつわる記憶の数々こそ、わたしたちペンドルトンというブランドの本質をなしているのです。