ところで、ウールシャツの歴史のなかで、どのような変化がありましたか?
製造面では、数えきれないほど変化があります。わたしが10代の頃、ペンドルトンはシャトルを持つ織機を使っていました。今では、レピア織機(※1)を用いています。また、かつては金属錯体染料を使用していましたが、現在は直接染料(※2)を使っています。だから、環境にもっと優しくなっています。
※1 レピア織機。シャトルのない織機のこと。
※2 直接染料。媒染剤を使用せず、直接的に染着できる染料。
仕上げ加工の面では、シャツを洗濯機で洗えるようになりました。1960年のことです。
洗えるウールシャツは、当時アメリカの若者のあいだで人気を博しましたね。サーフカルチャーの代名詞的な存在となりました。
思うに、ペンドルトンのシャツの人気の背景には、シャツが時代固有の文化に取り入れられてきたということがあります。洗えるウールシャツを受け入れた1960年代のサーファーしかり、メンズシャツを着るようになった1940年代の女性たちしかり。つまり、シャツを通して、自分が何者であるのかを確認できるようになったのです。
アメリカの人々にとって、文化の一部と言っても過言ではないですね。
ペンドルトンのシャツは、自分が何者であるのかを示すものとして愛用されてきました。そうしたブランドとして受け入られてきたことに、わたしたちは誇りを持っています。
「伝統」と「文化」が、ペンドルトンのキーワードなのですね。その背景には、異なる文化との交流があるのではないでしょうか。
異文化との交流こそ、人生を面白くしてくれるものだと思います。それは、古いものごとを新しい視点から見ることです。つまり伝統とは、変化し、その時代に合わせて使われるものではないでしょうか。実際、ペンドルトンのウールシャツに使っているタータンチェックも、元をたどればスコットランドの伝統的な柄がルーツにあります。
最後に、ブランドの未来の展望についてお聞かせください。
未来について確かなことはわかりませんが、わたしたちはきっと今より、自然の中にいることを、自然の美を賞賛することを望んでいるのではないでしょうか。だからペンドルトンは、こうした自然への敬意と繋がろうとしていくのだと思います。思うに、ペンドルトンが今作っているプロダクトは、記憶を生みだすことに繋がります。つまり、未来の世代が思い起こしてくれる記憶、家族やコミュニティの繋がりの礎を創造することにほかなりません。そしてそれは、創業以来、家族経営を続けてきたわたしたちペンドルトンの誇りでもあるのです。