オーラリー(AURALEE)の2025年秋冬コレクションが、2025年1月21日(火)、フランスのパリにて発表された。

上品さに交わるノスタルジー

上品さと心地良さとが温かく交わる、今季の着想源となったのが、オーラリーのデザイナー・岩井良太のとある友人であったという。ある時は洗練されたスーツを身に纏い、またある時には着古したTシャツを着るその友人は、相異なるテイストをいずれも違和感なく着こなし、そこにその人の個性が現れる。なぜならそこには、その人の歩み、大切にしてきた服が息づいているのだから──今季のオーラリーには、そういったパーソナルな足跡へのノスタルジーが、温かく洗練された佇まいへと昇華されている。

その雰囲気は、日常に寄り添うように、包みこむような心地良さを漂わせている。バルカラーコートやレザージャケットなど、リラクシングなシルエットがコレクションを通して広く見られる。また、フォーマルなスタイルを代表するテーラードジャケット、チェスターコートなども、ショルダーはやや余裕を持たせたセットイン仕様、ドロップしない絶妙な幅に設定しつつ、ボクシーなシルエットでリラクシングな雰囲気に仕上げている。

このようにゆったりとしたシルエットに対して、コンパクトな身幅や丈感も、随所に見受けられる。ボリューミーなダウンジャケットはショート丈に設定し、カーディガン、フーディ、ボーダーのカットソーなどは、比較的コンパクトなサイズ感にまとめている。そこには、今となっては小さくなったものの、以前は愛着を持って着ていた服への思いが、シルエットとして仮託されているのだと言うこともできるだろう。こうしたウェアは、時としてロング丈のコートやニットの上に重ねることで、レイヤードの豊かさをも引き出している。

このように、ある人がその昔に着ていた服への愛着、そのノスタルジーが、今季のコレクションには広く見出すことができる。レザージャケットは、経年変化を帯びたような風合いに。薄手のニットのクルーネックやカーディガンは、着慣れて毛玉を帯びたようなニュアンスを。ツイードのパンツやモールスキンのダブルコートは直接的に温かみを漂わせるし、カジュアルなブルゾンは襟にリアシングをあしらい、あるいは、襟の裏をレザーに切り替えるなど、どこかヴィンテージ感あるウェアに素材の変化でアクセントをもたらしている。

デザイナーの岩井はこのコレクションに寄せて、「お気に入りの古いTシャツが、ラグジュアリーなカシミアコートと同じくらい重要な意味を持つ様な、過去と現在が調和して未来の大切な宝物へと繋がる」と記している。それはつまり、愛着だろう。日常をともにする衣服への温かなノスタルジーを通して、何気ない1着がその人にとって大切になる瞬間を、オーラリーは眼差しているように思える。