トーキング アバウト ジ アブストラクション(TALKING ABOUT THE ABSTRACTION)の2015年春夏コレクション。
「City of Immigrants」をテーマに掲げた今シーズンは、セントラルアメリカの労働者階級の人々が住まう移民の街をイメージ。そこで生活する人、都会に夢を抱く人、旅人……。年齢層、生活習慣も様々で、貧しいながら勤勉に働く人々の「生きる強さ」を表現した。また、メキシコ、ガテマラ、アメリカ、インドなどで作られたハンドメイドのビンテージ生地を現代の洋服に落とし込み、1960年頃の空気と現代が混ざり合うワードローブを提案する。
例えばジャケットやシャツには、アメリカのヴィンテージカーテンがさりげなく取り入れられたり、ガテマラなどの花柄の刺繍が施されたりと、手の込んだ工夫がなされた。プルオーバーには龍の刺繍が見られ、1枚でもインパクトのある仕上がりだ。
また古着が好きなデザイナー市原直紀は、所々にその断片を織り交ぜた。ブルーのジャージをミックスしたり、ケーブルニットをランダムにつなぎ合わせたり、古着屋で売られていたワッペンを青く塗りつぶしダンガリージャケットに貼り付けたりと、随所に小さな遊び心をプラスした。
そして、今シーズンもパンツなどにトロンプルイユを採用。本物のデニムに見えるパンツは柄が転写で描かれた。また、前は転写で後ろは本物のデニムを用いるなど、前後のハイブリッドを楽しめるパンツも多く見らる。刺繍に見えるカラフルな柄や、アメリカの先住民などは、暖かなシーズンでもさらりと履ける薄手のパンツにプリントされた。
さらに、スタイリングは小物で差を付けた。ハットは長年使い込んだかのような味のある風合いで、旅人を彷彿とさせる。また雑誌『TUNE』や海外の新聞などがプリントされたクラッチバッグで、個性的なスタイルを完成させた。