ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)の2015-16年秋冬コレクションは、オペラの開演のような形で幕を開けた。ランウェイ奥のカーテンが降りると、赤ちゃんからおじいちゃんまで3世代の家族が勢揃いしており、まるで音楽一家の成果発表の晴れ舞台のようだ。
ファーストルックはブラックのジャカードの3ピーススーツで、それに続くのは赤ちゃんを抱いた4人の家族写真がプリントされた長袖Tシャツのルック。もはや“家族”がテーマの根本にあるのは明らかだ。
その後はしばらくスーツと家族プリントTのルックが交互に続く。中盤になると、このブランドらしい毛足の短いファーのブルゾン、ベルベットのスウェットシャツ、身頃と襟で2種類のファーを使い分けた豪奢なコートが登場。後半にかけては、「DG」のワッペン付のブルゾン、インナーにファーをあしらったデニムジャケットなど若々しいアイテムと、王冠に引き寄せられた蜂を刺繍したエンブロイダリースーツ、ナイトガウンやスモーキングジャケットなどの貴族的なアイテムを対比させた。
モデルは初々しい青年モデルから、一家の大黒柱的なナイスミドル、白髪の壮年まで様々。大人になりつつある長男、遊びたい盛りの次男、デニムが好きな三男、家計を支えるお父さん、家族の長であるおじいちゃんといったそれぞれのスタイルを表現したかったのだろう。カラーパレットはブラックとグレーを中心としたシックな構成で、それと対比させる意味でのホワイト、デニムのブルー、トレンド色のワインレッドを挿し色に使っている。
ラストルックのスウェットシャツには「AMORE PER SEMPRE」の文字が縫い付けられている。イタリア語で“永遠の愛”を意味するこの言葉。家族を世界一大切にするイタリアのブランドならではのメッセージだ。
Text by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)