2015年3月20日(金)、アディアム(ADEAM)が2015年秋冬コレクションを、東京ミッドタウンで発表した。今回披露されたのは、2月にニューヨーク・ファッション・ウィークで発表されたアイテムの数々。ランウェイには秋元梢、水原佑果、石田ニコルら人気モデルも登場し、その注目の高さをうかがわせる。
毎シーズン、様々なモチーフにインスパイアされたアイテムを展開するアディアム。今季は、現代アーティスト・名和晃平の作品からインスピレーションを受けたという。重力の力だけで描いた、モノクロのストライプが目を引くペイント作品「Direction」。そして、物体の表面を透明の球体で覆うことで、映像越しに物体を見た感覚を、リアルな彫刻として再現した代表作「PixCell」。この2作品から感じたイメージを、デザイナーの前田華子は、新たな角度からウェアに落とし込んだ。
まず「Direction」から得たエッセンスは、斜めのストライプ、そして重力を借りて枠を超えていくようなイメージだ。序盤に現れた、グレーのボンディング生地をドッキングしたタートルニット。グレーの部分は、凹凸であらゆる角度へと伸びるストライプが伸びているのだが、裾をよくよく見ると、服をはみ出していくつものひもが垂れ下がっている。まるで重力で滑り落ち、キャンバスからはみ出たペンキの線のよう。その後もニットやスカートなどに取り入れられつつ、控えめな、それでいて奥行きのあるデザインの魅力を、アイテムへと取り込んでゆく。
パネル切り換えのドレスやコートももちろん、作品のストライプがインスピレーション源だ。ただ、オリジナル作品のモノクロとは違い、グレーやホワイト、バーガンディ、ブラック、ネイビーと、落ち着きがありつつもバリエーションのあるカラーリングがポイント。光沢のあるリュクスな素材に、モヘアの立体のある生地を切り替え、こちらも凹凸のある質感に仕上げた。ドレスにボリューミーなロングマフラーを合わせるなど、意外性のあるコーディネートも新鮮な印象。
それから名和のもう一つの作品「PixCell」。この影響は、後半に進むにつれ段々と顕著になる。もともとこの作品は、名和がインターネットオークションで見つけた剥製がモチーフとなっていて、剥製の生々しさと、デジタル画面で見た物体の無機質さを融合させるアプローチがとられている。そして、今季のコレクションにおいて それは、有機的な素材と無機的な素材のミックスという手法に置き換わった。例えば、襟元部分にカールした羊毛をとりいれた、防水ナイロンのコートやブルゾン。裾に向けて徐々にニットからナイロンへと変化していく、袖にファーを使用したコートもそうだ。
そんな有機と無機が混ざり合う中で、最後は肩からテキスタイルが斜めに伸びる、ワンショルダーのドレスをまとった富永愛が、ランウェイをゆっくりと闊歩。ミニマルなスタイルをベースとしながらも、アートにひもづけられた意外性と、ディテールへのこだわりで、終始観衆の目を惹き付けていた。