ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)の2016年春夏コレクションは、地中海のシチリアと中国の伝統文化をミックスした華やかで開放的なコレクションだ。
ファーストルックは、シルクのような質感のブラウンの小紋柄のスーツ。柄の上にはさらに孔雀のプリントが施されていて、ここ数シーズン連続して提案している「服をキャンバスに見立てた絵画のような総柄」をしかと受け継いでいる。それでも、インナーにはカジュアルなパジャマシャツを合わせているから、どこか貴族の部屋着のようなリラックスした雰囲気がある。
それに続くのは、東(チャイナジャケット)と西(コックジャケット)を融合させたようなデザインのセットアップスーツ。頭に乗せた人民帽風のキャップと足元のエスパドリーユのギャップが心地良い。
アイテムでは、ビッグサイズの半袖Tシャツとダメージデニムが目を惹く。米俵のようなざっくりした生地感のTシャツは、まるで絵を引き立てる額縁のような雰囲気。額に見立てた刺繍はオートクチュール的なアプローチで、半袖とは思えない存在感がある。クラッシュ加工を全面に施したデニムは、もはや本物のヴィンテージの領域に。鳥の刺繍を施したデニム(ヒゲや穴を枝に見立てている!)なんかもあったりして、遊び心を加えているのも楽しい。こうした鳥のモチーフは、熱帯鳥の美しい絵画で知られるイタリア・パレルモのパラッツィナチネーゼ(中国風小宮殿)からインスパイアされたものだという。
カラーパレットの中心に君臨するのは、鳥の王様、孔雀。ブラック、ブルー、ベージュのベースカラーに、孔雀から取ったターコイズブルー、レッド、イエロー、オレンジなど鮮やかな色を挿している。シューズはエスパドリーユ一択。バッグ類はいつもより控え目で、洋服を引き立てる役割に徹している。
今回みせたルック数は、通常のファッションショーの2〜3倍となる106体。それだけ多いと冗長になりがちだが、モデルの歩くスピードを速く、さらに間隔を極端に短くしたスピーディな演出で、圧巻のバリエーションを一気呵成に見せた。ラストは今シーズンのテーマを反映させたデザインのポロシャツを来たモデルが一斉に登場し、シチリアの夏の到来を表現。シチリアの摘みたてのレモンがたっぷり入ったレモネードが飲んだ後のような爽快なコレクションだった。
TEXT by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)