アクネ ストゥディオス(Acne Studios)が2016年春夏メンズコレクションを発表した。
1970年代、アメリカ・ニューヨーク。ここでは、のちのパンクロックにも影響を与えた音楽性とともに、その個性的なファッションで大きな注目を集めたバンドがあった。ニューヨーク・ドールズ。今季のアクネは、伝説のギタリスト、ジョニー・サンダースをはじめとしたニューヨーク・ドールズのメンバーの好んだ、中性的なパンクスタイルからインスパイアされている。
とはいっても、パンク特有のとげとげしさは見事に消されている。その大きな理由は、アクネらしいとも言えるカラーパレットにある。ブルーグリーンやオレンジといったビビッドなカラーをポイントに、メインカラーにはくすんだグレーやブラウン、ベージュなど、シックで独特の色味を使用。力強さを全面に出すパンクとは裏腹に、どことなく柔らかで都会的なムードを演出している。
ただ、ユニセックスな指向性という意味では、ニューヨーク・ドールズに通ずるものも確かにある。ジャンプスーツやショーツは、太ももの半分ほどまでしかないショート丈。カシミヤのクルーネックニットは、ワンピースと見紛うほどに丈が長い。足元も、コルクソールのプラットフォームシューズといったユニークなものや、ヒールブーツといったフェミニンでエッジィなアイテムが彩った。
それからサーフの匂いもまた、パンクの匂いをかき消している。クリエイティブ・ディレクターのジョニー・ヨハンソン(Jonny Johansson)は、ロビン・キーガル(Robin Kegel)とサーフィンをした際に受けたインスピレーションを、今季のコレクションで表現したという。例えばニットやセットアップに落とし込まれた渦巻きのようなグラフィックや、ワイドなジャンプスーツを彩った流れるようなラインやモノトーンのデザイン。ロビンのサーフボードアートをもとに製作されたというこれらのグラフィックは、70年代パンクの中にうまく溶け込み、リラクシングなムードを吹き込んでいた。