ランバン(LANVIN)が2016年春夏メンズコレクションを発表した。今シーズン、デザイナーのルカ・オッセンドライバーがコレクションでイメージしたのは、男のドレッシング・ルーム(更衣室)だ。
「私は生きているガーメントが好きです。生きた服とは、躍動的でストーリーのある服のことです」と語る、デザイナーのルカ。それでは、彼の言うストーリーのある服とは何を指すのだろうか。その答えは、ドレッシング・ルームをイメージしたことに求められるのかもしれない。更衣室にあるクローゼットは、いわばこれまで自分が歩んできた、時代時代の象徴が蓄積したもの。コレクションに見られたサイズ・デザインの無秩序さは、男のたどってきた人生というストーリーを表している証拠なのだろう。
ファーストルックは、まるで父親のクローゼットから引っ張り出してきたようなオーバーサイズのポロシャツに、セパレートで柄が入ったタイトなパンツのスタイルだった。そのほか、ブルーのダブルブレストのセットアップには、深いUネックのTシャツを合わせ、ウエストにイン。スタジアムジャンパーに太いストレートパンツを合わせた。こうしたコーディネートなどからは、時代を飛び越えたレトロな雰囲気が感じとれる。
しかしながら単に古くさいスタイルにとどまるわけではなく、現代からズレた部分をエッジィな魅力に変えているのが、今季のランバンのうまさだ。それはコーディネートバランスの影響であり、随所にモダンなアイテムも取り入れている影響でもある。例えばヴィンテージ風のオーバーサイズのコートの足元は、フロントをジップアップにしたデザイン性の高いブーツ。立体的なハンドバッグ、タイトなショートパンツなども、ミニマルな風を吹き込み、モダンとヴィンテージが融合する、独自の世界観を構築していった。
ルカはこうも語っていた。「何も用意されているものはないのです。アクシデントからクリエーションが生まれるのです」と。コレクションに取り込まれた不確実性は、同じく不確実な人生というストーリーを表し、不完全であるが故の魅力を生み出す役割も果たしていたのだ。