パリ・ファッション・ウィークにて発表された、リック オウエンス(Rick Owens)の2011年秋冬コレクション。今シーズンのコレクションは、遊びを加えたフォルムにより近づけるため、「LIMO」と題した。LIMOとはリムジンを意味する。
今シーズンはアメリカのファッションデザイナー、チャールズ・ジェームス(Charles James)の有名なキルトダウンジャケットにインスパイアされた。彼は仕事のためならば私生活を完全に度外視し、ストイックなまでに仕事に没頭。女性の官能美を最大限に表現し、心を注ぐ純粋さ、方向性は常にリックの模範となっている。
自身も気に入っているロングスカートを主体に、極めてナローなシルエットを構築。エレガントなラインをあえて粗く仕上げるため、ウールメルトン、ワックス加工ポプリン、フランネルキャンバスなどを用いてこれらのスカートを提案した。退廃的な雰囲気を醸し出すモノトーンやアースカラーだが、これらの素材がリズムを生み出す。シルエットに限らず、野心や意欲においても汚れなく純粋、そして曖昧なのだ。
ショーのヘアメイクではモノトーンやアイシーグレーを裏切るようなマットで真っ赤な口紅を用い、くっきりと冷酷なグラマーに仕上げた。
「コレクションでは常に"セックス"と"死"と"復活"をテーマにしている。これらの出来事の間に起こる曖昧さが灰色の霧に変わる様子。そして一瞬の傷や壊れそうな美がすべての現在と過去を破壊する瞬間。」-リック・オウエンス
シンプルでありながらも荒々しいフォルムは、肩からかけられたダブルフェイスカシミアのケープ、ヒップを包み込むウール、またオイスターのダッチェスサテンとキャンバスの組み合わせなどに表れ、彼の言葉を体現している。冷酷でありながらも繊細な曖昧さに興味を惹かれれば、その独特なテクスチャーに惑わされる。霧で満ちた森のような儚さと鮮烈な野心を心に残すコレクション、思わず迷いこんでしまうだろう。