戦後、欧州も日本も焼け野原となり、戦勝国となったアメリカは世界一の経済大国となり、影響力を強めていた。そんな状況なので、アメリカの文化が世界により普及しやすい状況になっていた。その中にはジーンズも含まれていた。
ジーンズの普及に、戦後、海外に派遣されたアメリカ軍の兵士たち(G.I.)が貢献。リーバイスの「501」を穿いたG.I.は、まさにジーンズの広告塔であったのだ。
ハリウッドの映画も黄金期を向かえる。その中には、それまでのスターとは違う、新しいスターの形が誕生していた。
その代表の一人はマーロン・ブランド。マーロン・ブランドは、エリア・カザン作の『欲望という名の電車』(1951)で主役に抜擢され、ワイルドでセクシーで、なおかつ危ない、不良的なキャラクターを演じた。革ジャンとジーンズを身に着け寝そべるマーロン・ブランドそして『乱暴者(邦題:あばれもの)』(1953)では暴走族のリーダーを演じます。マーロン・ブランドはこの映画の中で初めてジーンズを着用した。
ちなみに、この映画は、バイクに乗った不良たちがホリスターという小さな町で暴れ、社会問題として取り上げられた「ホリスター事件」をモデルに描かれている。このバイクに乗った不良というのは、戦争から帰ってきた帰還兵たちであることが多かったと言われている。彼らは、戦後アメリカに帰還して、革ジャンとリーバイスの「501」を身に着け、バイクにまたがるようになったそうだ。
マーロン・ブランドは、黒の革ジャンと、黒いブーツ、そしてジーンズという格好で登場し、バイクを乗り回して暴れまわる。
マーロン・ブランドの演じた不良は、それまでのスターよりも暴力的で、若者的といえるものだった。大人たちは、このジーンズをはいた不良たちに眉をひそめ、自分の子供にジーンズを着用させてなようとしたが(アメリカ東部の学校ではジーンズの着用が禁止されていたところもあった)、若者たちはジーンズに魅了され、こぞってジーンズを買い、はくようになったのだった。
ジーンズを穿いた映画スターと言えば、マーロン・ブランドと、もう一人ジェームズ・ディーンだ。
ジェームズ・ディーンは、『エデンの東』(1955)で初主演をし、この作品で認められスターとなりました。そして、つづく『理由なき反抗』(1955)では、大人や社会に対して反抗する若者を演じる。
ジェームズ・ディーンとマリリン・モンローこの『理由なき反抗』の中で、ジェームズ・ディーンは、Leeの「101ライダース」を着用した。リー「101ライダース」をはいたジェームズ・ディーン演じるジムは、それまでの時代になかった“若者の存在"を世間に見せつけた。それまでの社会では「大人」と「子供」の二種類がいて、「子供」は「未熟な大人」であると認識されていたからだ。
そしてこの映画はもう一つ、反抗児や不良が、必ずしもスラム街や貧しい家庭環境などから生まれるものではなく、ごく普通の一般家庭からも生まれるものであることを表現した。ナイーブで傷つきやすい若者に、若者を中心とした観客は共感し、また熱狂し、リーの「101ライダース」も、リーバイス「501」と同じく、若者たちの人気を得ることになった。
第5章は、ジーンズのファッション化