ヴァレンティノ(VALENTINO)の2017年春夏コレクションが、フランス・パリで発表された。
空想的な天国と悪魔的な地獄を独特な世界観で表現した15世紀ネーデルランドの画家、ヒエロニムス・ボス。この鬼才の画家を思わせる幻想的なラインと、攻撃的なパンクのテイストがコレクション中に同時に現れ、中世の厭世的な表現と、現代の反体制的な文化とが融合した、時代を超える旅が展開された。
コレクション序盤のカラーパレットはピンクとレッドが中心。そのカラーが持つフェミニンさを生かしつつ、ブラックを組み合わせることでダークな一面を垣間見せる。ファーストルックでは、ブラックのラインがピンクをベースにしたドレスに鋭角のプリーツを生み出し、尖ったパンクなアクセントを見せていた。
絵のような模様が描かれたドレスは、繊細な刺繍ステッチによるものだ。飛び立つ鳥のような柄やその下の地上を思わせる柄が、布地にできたドレープの上で交差する。その様子は、この世のものではない優美さを示しているのだろうか。
中盤になると、カラーパレットは急変。くすみがかったようなイエローのエレガントなルックが登場し、コレクション全体にアクセントを加えた。続く後半では、軽やかなシースルー素材を用いた、ブランドらしいロングドレスが多く披露された。これらのドレスは、ロングスリーブやタートルネックがついた禁欲的なシルエットながらも、肌を透けさせる素材感によって背徳的な感情を観る者に与える。さらに、この素材の風になびく靄のような感触も、ヒエロニムスが誘うファンタジックな世界へと通じていく。
アクセサリーとして目立ったのは、ショルダーからかけたマイクロミニバッグだ。ウォレットすら収めることのできないサイズ感の本体には贅沢な装飾が施されている。華奢なロングチェーンを生かして、バッグをまるでネックレスのようにコーディネートしていた。