ヨシオクボ(yoshio kubo)が、2011年10月19日に2012年春夏コレクションを発表した。
円形に設けられた観客席の中央でバンドが演奏を始め、それを楽しみながらショーの開始を待った。演奏された楽曲は今回限りのオリジナルで、デザイナーから渡されたショーのルック写真を楽譜代わりに、即興で演奏されたもの。ショーは皆を楽しませるもの、ここで、この瞬間しかやっていない唯一無二の時間をおしゃれな音楽と共に楽しんでほしいという、デザイナーの気持ちが伝わってくる心にくい演出だ。
光の残像のような雰囲気を出したかったという今季コレクションは、印象に残る色を作ろうと拘り抜いて誕生した鮮やかなカラーがダークなランウェイの上で光を放っていた。 黒のスーツの上を走るトリコロールカラーのラインや、パッチワークのつなぎ目が描くシャープなラインが、光速で疾走するスピード感までを表現。さらに、そこに組み合わせたジャカードの柄とのコンビネーションが絶妙だ。カラフルなジャカード生地の一部から緯糸(よこいと)を抜き、残った経糸(たていと)が浮き上がらせたラインはまるでプリズムのよう。
人気スタイリスト望月唯氏によるスタイリングのポイントである巧みなレイヤードスタイルがヨシオクボの世界観を際立たせる。ジャカードのレギンスの上から異なるトーンのジャカードのハーフパンツを合わせたり、ジャケットの下から鮮やかなカラーのパーカを覗かせたりと、色や柄達が共鳴し合うのを楽しむかのようだ。シャツの上にトレンチ風のジャケットを着て、スポーティなハーフパンツを合わせたスタイルや、黒のピンストライプのスーツのパンツの上から鮮やかなブルーのハーフパンツを重ねるアイディアなど、クールだがリアルなスタイリングは他の誰にも真似できない。
1年ぶりのショーを終えての感想を聞かれ、「快感でした、緊張するっていいですね。怖いという緊張ではなく、早く見せたくてしょうがないという緊張です。」と、興奮冷めやらぬ気持ちを語ったデザイナーの久保嘉男氏 。彼が作り上げたのは、これが今の東京のカッコよさだと、世界に誇りたくなるようなショーだった。