アトリエ ヴェルサーチ(Atelier Versace)が、2017年春夏オートクチュールコレクションで見せたのは「変身の美」。職人たちの4つの技をキーワードに、クリエーションを纏うことで美しく可憐に変貌する女性を描いている。
4つの技のうち、まず1つ目は“ノット(結び目)”。クリスタルメッシュとシルクシフォン、あるいはトロンプルイユの結び目の刺繍はシルエットのまわりに施され、体を包み込む。一方でシアーなスカートの連なった結びの数々は、まるで溶けてるかのように床に届く前にほどけていく。
2つ目の“プリーツ”は、結びとは異なり直線的な力強さを蓄える。体の周りで波打つように変化し、躍動的なボリュームとシルエットを完成させていく。この表現世界に新たに息吹を吹き込んだのは、カラーグラデーションであり、その様はエレガンスかつドラマティック。特にチュールプリーツは、体に等高線を這わせ、その下のケージを露わにしている。
そして、流動的なドレープをもたらすことでもうひとつの次元を取り入れたのは、3つ目の“メタル”である。深いVネックのミニドレスは、フェミニンなローズゴールドに刺繍されたミラーフリンジが揺れ動く。ノースリーブのカクテルドレスは優雅アシンメトリーな流れを起こし、クリスタルがもつ輝きと共に非対称の美へと導く。
また、中世の「キメラ」にインスピレーションを受けた今シーズンの中では、動物の変身を見るファンタジーが繰り広げられた。最後のキーワードはそれを表す“オーガニック”。ホルターネックのイブニングドレスはライトグレーのスワロフスキークリスタルが配された。それはまるで爬虫類の鱗のようであるが、目線を下に向ければ膝下でライムグリーンの羽根が現れる。レースから成るイブニングドレスは、スワロフスキークリスタル、オーガンザの結び目と花びらの刺繍でリッチに装飾され、体を這うヘビのような印象を作り出している。