イギリスで誕生したフレッシュハンドメイドコスメブランド「ラッシュ(LUSH)」。街で見る店舗にはいつもカラフルな入浴剤や石鹸、スキンケア商品が陳列され、華やかな香りを店の外まで漂わせている。名前は知らなくとも、性別・老若男女問わず“街で店舗を見たことがある”という人は多いはずだ。
しかしながら、それぞれの商品がどのようにしてできているのか知っている人は少ないのではないだろうか。効果的かつカラフルでユーモアたっぷりの「ラッシュ」の商品が出来るまで、実は、他のコスメブランドとは少し異なる製造背景をたどっている。
今回は見た目だけでなく、製造過程から使い方、工場見学ツアー、スパまで個性あふれる「ラッシュ」の秘密に迫ってみる。
使用している原料は、現在200~300種にも及ぶ。そのほとんどが、緑いっぱいの畑からとれた、食べてもおいしいフレッシュ野菜や果物だ。では、原料を選ぶ上でラッシュがどのようなことをポイントにしているのだろう。
原料全てに共通するものとして、「ラッシュ」では“美しい原料”という言葉を掲げている。そしてこの言葉には3つの原則があるという。
まず、使用者にとって安心安全であること。次に、原料の作り手が充実した生活を営めること。使う人だけでなく作る人にも喜んでもらえるような商品づくりだ。そして最後に、作る過程で遺伝子組み換えを利用していない、あるいは動物が犠牲になっていないこと。地球の生態系が「ラッシュ」の介入によって崩れず、きちんとサイクルが機能するのかなどを考え、自然に調和する栽培を目指している。
「ラッシュ」では、できるだけフレッシュな野菜やフルーツを使うことを目指しており、可能な限り輸送時間のかからない国内産原料を調達している。新鮮な野菜を実際に食して美味しいと感じるのと同じように、肌にとっても新鮮な原料は嬉しい。また、国内産を使うことは輸送時にかかるCO2削減にもつながるだけでなく、輸送費が削減できる分、材料費にコスト比重を置くことができるのだという。
ここであるひとつの農場を紹介しよう。
神奈川県愛川町。「ラッシュ」の製造工場から20分ほどのところにある「たむそん農園」は、商品の原料となる野菜を提供する農場のひとつ。ここでは、薬品を一切使用しない自然農法で年間約200もの野菜を育てている。
農園には野菜とともに草や花、いわゆる“雑草”がところどころに生かされている。田村さんにとって“雑草”は大きな味方で、彼らは土の性質を知らせてくれるなどメリットを与えてくれる存在。
“雑草は野菜の成長を妨げるのでは?”という疑問を持つ人もいるだろう。あながちそれは間違いではないのだが、実際に雑草が野菜の成長を妨げるのは、光と風の通り道を遮ってしまうことが理由である。だからこそ「この畑に“害虫”や“雑草”という言葉はない」と農園を経営する田村五郎さんは語る。「たむそん農園」では、生態系をともにすることですべてが自然とすくすく育っていく。
このように大切に育てられた野菜たちは、工場へと届けられる。そして、まるで特別な日に振る舞う料理のように愛情が込められ、ひとつひとつが製作されていく。
「ラッシュ」の製品は、ひとつひとつがまるで料理をするかのように作られている。製造現場はまさにキッチンさながら。IHヒーターでナチュラルバターを溶かしたり、お湯を沸かしてドライハーブ成分を抽出したり、大きなミキサーで原料を混ぜ合わせたり。こうして人気のバスボムやフェイスマスクなどが生み出されている。
お店に並んだ「ラッシュ」の商品をよく見てみると、成分などと一緒に「誰がこの商品を作ったのか」が、似顔絵付きで明記されている。こういったパッケージ表示も、製造現場の延長線上。“愛情の証”のひとつだろう。