パリファッションウィークで発表されたバルマン(BALMAIN)の2012-13年秋冬コレクション。2011年4月に新デザイナーに抜擢されたオリヴィエ・ルスタンは、ロシア革命期に活躍したジュエラーのカール・ファベルジェの作品に魅了された驚きを、クリエイションに反映させた。インスピレーション源は、クリスティーズに展示されたリチャード・バートンからエリザベス・テイラーへ贈られたとされるブルーとゴールドのイースターエッグ。その装飾の美しさとシェイプの簡潔さに影響を受けてバルマンの基本に立ち返り、シャープで力強いバルマンのジャケットを提案している。
「ジャケットは完全な正方形であるべきと考え、アーキテクチャー的なラインを保ちながら作り上げた。一方で、テクニックを利用して女性の顔を引き立てる美しいフレーム、立体的な装飾品へと変換させた」そう語るルスタンの言葉は、ボーイッシュなクロップドパンツやミニスカートなどのすっきりとしたボトムと組み合わせることで、その意味合いをより強くしている。
ファベルジェの氷状パターンを取り入れたクロスステッチタペストリーのカメオで覆ったスウェットシャツの他に、ロシアの装飾とコサックのテーラリングをコレクションに注入。正統派教会の祭服、高価な陶器、贅沢な宮殿の内装などの華美なデザインを取り入れて、幾重にも重ねた複雑なパターンをルックに取り入れた。
このコレクションの主役とも言えるベルベットも注目だ。新しいエンボスパターンあるいはデヴォレが、シャープなテーラリングと着こなしを引き立てている。そしてエリザベス・テイラーのふんだんにパールをあしらったコレクションへの感嘆は、ロシア正教の建築物をイメージした模様の大きなパールやダイヤモンドの刺繍を施したハイカラーのアワーグラス型のベルベットドレスへと花開いた。
柔らかなキッドレザー、グレインパウダーウール、ポニースキン、サテンなどの素材を自由にミックス。ある時はそれぞれの素材を独自に効かせながら、ペトロールブルー、ビリヤードグリーンなど濃厚なダークカラーとアイシーなパステルカラーとの戯れが微笑みかけてくる。