2012年3月22日、アライサラ(araisara)が2012-13年秋冬コレクションを発表した。来季よりパリで発表することが決定し、東京での最後のコレクションとなった今季のテーマは「阿那曲(adakyoku)」という楊貴妃が詠んだ詩だ。楊貴妃は、伝説上日本とも関係があり、日本と中国の架け橋になりたいというaraisaraが目指す存在と重なるのだそう。
尺八、チェロ、そしてピアノの生演奏がBGM。ジャンルを超えた音楽によるセッションは、いろんな文化が共に発展していくことを願うaraisaraのイメージにぴったりだ。
今回は自らのルーツである日本と中国の2つの文化を服の中で融合させた。生地の上で美しいグラデーションを描く水墨画のような模様は、"濡れ描き"という日本の友禅染の技法。濡れた生地の上に線を描き、それがにじんで独特の模様が出来上がる。そしてこれは中国の長く受け継がれてきた水墨画の技法と同じなのだそう。白と黒のコントラストがモダンな柄の元になった、「剪紙」という中国の伝統的芸術も日本では、「切り絵」として存在する。今回はそれを手捺染の技法を用いてプリントしている。
フィナーレに登場したのはすべて同じデザインの服。着こなし方を少しずつ変えることで、何通りものデザインに変化する。一枚の服の無限の可能性を追求したという。そして会場は「リフレッシュ」と名付けられた爽やかで甘い香りに包まれた。「阿那曲」は、女性がきれいな服を着て踊っていい香りがする、という内容の詩。それにちなんだ演出だと、ショー後に明かしてくれた。忙しい中集まってくれたお客様に楽しい時間を共有してもらって、何か感じてほしいという思いが、感動的なコレクションを作り上げている。
「今回のショーは、araisaraの第一章の完結と、新たなステージに向けての第二章の始まりです」(araisara)。