セリーヌ(CELINE)の2019年春夏ウィメンズコレクション。今季のパリは、セリーヌの話題で一色だった。エディ・スリマンがパリにカムバック。ショーの前は「セリーヌはどうなる?」、そしてショー後は「新生セリーヌをどう思った?」と。とにかくファッションシーンは終始このトピックで持ち切り。ここまで話題を作り、注目を集めるエディは“カリスマ”か。
デビューショーのテーマは「パリの夜」。“セリーヌが消えた。 アイ ミス フィービー。”その声が上がるのも無理はない、これまでのセリーヌとは違う。ミニドレス、ギラギラの装飾、細身のタキシード。エディのコードがランウェイを駆け巡っている。エディファンにはたまらない、デビューショーの幕開けだ。
しかし、蓋をあけると、好きなものはずっと好きでいる彼のピュアな心と、ファンに向けてマイスタイルを贈る思いやりの心が垣間見える。インスピレーション源は、エディの10代の記憶。パリで学生時代を過ごした彼は、クラブに通い夜を過ごしたという。当時の思い出をファッションに落とし込み、そして自分の大好きな音楽との融合を楽しむ。
クラブで踊っていた女の子たちをイメージした、ダンシングドレス。ふっくらと膨んだパフィーなミニドレスに、パイソン・クロコダイルなどアニマルモチーフのワンピース。華奢な脚を引きたてるミニドレスにはメンズライクなジャケットをあわせて、女子だってスーツを着たっていいじゃないとパンツスーツも用意した。
70年代ヨーロッパを中心に流行っていた、コールドウェーブという音楽のムーブメント。グラフィカルな衣装を纏って、エレクトロミュージックを奏でていたアーティストたちをヒントに、ショルダーを大きく張ったジャケットや太もも辺りに羽のようなテキスタイルを残したテーパードパンツなどを作り出した。頭にのせたのはViViハットという名の小さな帽子かヘアバンド。これもパリのクラブで見かけた、女の子たちの思い出から生まれている。
エディの思い出が詰まったピースは、繊細なクチュールのテクニックによって表現される。強気なアニマル模様も全てスパンコールやビーズを並べて緻密な刺繍によって生まれたもの。ビッグサイズのドレスにもジャケットにも、細かいパーツを重ねて重ねて模様を描いた。ストリートtoクチュール、エディが示したもう一つのキーワードは、彼の大切な思い出とセリーヌの職人たちの手仕事によって表現されている。