ケモノ(Kemono)が2019年春夏コレクションを、渋谷・西武百貨店にて発表した。
「アジア、日本伝統のあるものと現在、未来無重力をかけあわせたもの。」を、コンセプトに掲げるケモノは、2015年に日本で誕生したファッションブランド。日本の要素を取り入れたアバンギャルドなスタイルを得意とし、近年では海外コレクションでの発表も積極的に行っている。
そんなケモノが今季テーマとして掲げたのは「透藍生」。デザイナーのI.P.Uが注目したのは、生命の起源である藍色の海。本来なら透明にも関らず、人の目からは“藍色”に見えるその神秘に魅了され、“透明”な状態として生まれた人間が、人生を通して色付いていくというストーリーを思い描いた。コレクションの中では、カラーやディテールを通して、そのアイディアを表現していく。
ショーの始まりを飾ったのは、頭からすっぽりと被ったトランスペアレントのジャケット。その下に合わせたのは純白のシャツワンピースで、その姿は生まれたばかりのようなピュアな印象を与えてくれる。時が経つごとに、そのカラーは変化していって、ブラックやグレンチェックが掛け合わされ、洋服に多彩な表情を生みだしていく。
随所に見られたのは、ピースに施された特徴的なテープ。海面が揺れ動く様子からインスピレーションを得たというこのディテールは、ジャケットの身頃全体に施されていたり、裾を中心に縦横無尽に張り巡らされていたりする。モデルが歩く度にひらりひらりと舞うテープは、風に揺らめく波を彷彿させる心地よい余韻を残していく。
またテープに代わって登場したフリルは、ピースの上でアシンメトリーにあしらわれていて、日々変わりゆく波のように、ユニークなシルエットを描いていく。ブラックドレスに幾重にも重ねたフリルの上には、同じくフリルを配したグレーのジャケットを重ねて、ボリューミーに。またドレスに3段あしらったフリルには、ネイビー・グレー・ブラックと3色の配色を施すことによって、その立体的なシルエットをより強調。躍動感溢れるフレッシュな印象に仕上げた。
ブランドのコンセプトを可視化したものとして、最も顕著だったのがスケルトンの下駄だろう。本来日本の伝統的なイメージの強いフットフェアは、その色を完全に消滅させることで、近未来的な仕上がりに。無色ながらも、ピースの中でひと際存在感を放っていた。