オーラリー(AURALEE)の2019年春夏コレクションは、快晴の朝、窓を開けた瞬間に感じる風のように爽やかなカラーパレットに包まれた。
ベージュ、ホワイトなどのスタンダードなカラーに、マスタード、ミントグリーン、スカイブルーといった色味が重なりあう。柄という柄はなく、クラシックなストライプやチェック柄が挿入されることで、気品というエッセンスが濃厚になっている。
この爽やかなカラーパレットからは、透明感すら感じられる。それはきっと素材が理由であって、例えば、三重構造のシルクだったり、ハリのあるコットンだったり、さらには、軽やかなリネン素材だったり。春夏ならではのテキスタイルを主軸としたアンサンブルが、透き通るようなムードを引き起こしている。
シルエットもまた優しくて穏やかなもの。これだけ素材と色のマッチングが絶妙なのだから、目立って技巧的、装飾的に見せるものなどは必要ないらしい。今季は、特に落ち感が美しく出るようなものが多く、ウィメンズではスリット入りのロングドレス、メンズではまるでショールのように軽やかなジャケットが登場している。パンツスタイルでは、股上を深く設定したナードな雰囲気のワイドストレートを提案しているのも印象的だ。
特筆すべき装飾などいらない。誰もが似合う洗練されたスタンダードがオーラリーの得意とするところだ。極め抜いたスタンダードだからこそ、素材の個性を生かした服の提案ができる。
「FASHION PRIZE OF TOKYO」の受賞デザイナーとして選出され、2019-20年秋冬シーズンと2020年春夏シーズンには、パリでコレクションを披露することも決定しているオーラリー。今季は、これまで変わらず目指してきた上質な“スタンダードクロージング”を再考させるようなひとつのドラマを描いたみたいだ。