ブラック スキャンダル ヨウジヤマモト(BLACK Scandal Yohji Yamamoto)(BLACK Scandal Yohji Yamamoto)は、2019年春夏メンズコレクションを発表した。モデルには、ミュージシャン・俳優の金子ノブアキを起用。
目に留まるのは、象徴的な“ブラック”の色彩に“FLAVOR - 色を付ける”要素として用いられた山本耀司直筆の言葉や、そのメッセージを物質に昇華させた「美人画」「レオパード柄」「花」をあしらったウェア。視界に勢い良く飛び込んでくるような、スキャンダラスで自嘲的なメッセージは、刺激的ではあるがどこか悲哀を感じさせる。
文章を機械的に羅列したシャツは、プリントという方法で雑誌あるいは新聞などと同じくメディアのように機能している。「肉体への信頼」「命預けます」など、服の上に強調されたテキストは、メッセージをあまりにも直接的に投げかけるからだ。しかし、印刷は斜め向きであったり、一面で完結しなかったり、あえてアバウトで無造作な仕上がり。より一層、シニカルな印象を強める。
鮮やかな色彩で描かれた美人画は、黒の生地から像が浮かび上がるような立体感が“艶”を演出。しなやかな布地は、身体に沿うような落ち感を見せたり、空気を含んで流れるようなドレープを生み出したり、躍動感を見せる。布の動きは、毒っぽくダークな絵柄とコントラストを描くようでありながら、生々しい鮮烈さを助長する。
また、レオパードは、シックな色彩の総柄セットアップや、美人画の背景・パーツとして登場。動物的な表現で、エネルギッシュな無骨さを表現する。
モチーフが強いメッセージ性を帯びている分、洋服のフォルムは意外にもシンプルだ。オーバーシルエットでありながら品のあるオーラのジャケット、分量を多くとったワイドサルエルパンツ、ストレートなフォルムのロングシャツ、裾にボリュームを持たせ丸いフォルムに仕立てたワイドパンツなどを揃える。強い主張を発しながらも、どこか淡々とした静けさを併せ持った、ヨウジヤマモトならではの“スキャンダル”の表現が見て取れた。