映画『幸福なラザロ』が、2019年4月19日(金)より、Bunkamuraル・シネマほか全国の劇場にて順次公開される。
長編監督作の全てがカンヌに出品されてきたイタリアの気鋭、アリーチェ・ロルヴァケルが監督・脚本を手がける本作は、1980年代初頭にイタリアで実際に起きた詐欺事件から着想した、寓話的ミステリー。社会から断絶した小さな村を舞台に、そこに生きる純粋無垢な農夫の若者・ラザロに突如としてやってくる激動の日々を描いた作品だ。
舞台は、渓谷で外の世界と隔絶されたインヴィオラータ村(「汚れなき村」の意)。村人たちは、「人間は獣と同じ」と語り、小作制度の廃止を隠蔽する領主のデ・ルーナ侯爵夫人(ニコレッタ・ブラスキ)に支配され、社会と隔絶した生活を強いられていた。そして誰よりも働き者の若い農夫ラザロ(アドリアーノ・タルディオーロ)は、お人好しが過ぎるあまり仲間から軽んじられ、仕事を押し付けられていた。
ある時、侯爵夫人の美しい息子タンクレディ(ルカ・チコヴァーニ)が町からやってくる。母親に反発するタンクレディはラザロを仲間に引き入れて自身の誘拐騒ぎを演出し、二人は強い絆で結ばれるようになる。その頃、誘拐事件を発端に、インヴィオラータ村の存在が、領主による大規模な労働搾取の事件現場として世の中に報道される。結局村人たちは、揃って住み慣れた村から出ることになるのだが、ラザロだけは・・・・・・。
ロルヴァルケル監督は、本作製作のきっかけになったという、イタリアで実際に起こった農民達の隔離や労働搾取という驚愕の事件について「歴史的な転換期に乗り遅れてしまったこの農民たちの物語に、私はずっと心を動かされてきました。この新聞記事は次の日には忘れられてしまうようなニュースです。壁に貼られた記事はすっかり日焼けし黄ばんでも、この記事だけが、世界が崩壊したこと、そして彼らが置き去りにされたことを示す記録だったのです」と、長く感じ続けていた思いを紹介。
また、本作のテーマを「この映画が伝えるのは、この世で生きていく上で、誰のことも疎まず、人を信じ切ることの尊さです。生きていく方法は他にもあると思い込み、善なる生き方を拒み続けている私たちに、その事実を突きつけるのです」と語っている。
2018年カンヌ国際映画祭では、パルムドールを受賞した『万引き家族』と共にコンペティション部門で話題をさらい、見事脚本賞を受賞。また、北米公開時に本作を観たマーティン・スコセッシが絶賛し、映画完成後にプロデューサーに名乗りを上げるという異例のバックアップを実施。ほかにも、NYタイムズ紙が2018年ベストテンの5位に選出し激賞するなど、各国で話題を集めている。
主人公・ラザロ役を務めるのは、高校在学中に1,000人以上の同世代男子の中から監督に発掘された新星、アドリアーノ・タルディオーロ。また、今やイタリア映画界を代表する女優であり、監督の実の姉でもあるアルバ・ロルヴァケルが前作に続いて出演。侯爵夫人は、ロベルト・ベニーニの公私にわたるパートナーであり、『ライフ・イズ・ビューティフル』などで知られる女優ニコレッタ・ブラスキが演じている。
自然の厳しさと美しさを余すところなく切り取ったのは、ロルヴァケルの前監督作『夏をゆく人々』でも撮影を担当したエレーヌ・ルヴァール。デジタルではなくスーパー16mmフィルムで撮影した独特の質感が生む美しい映像美も、本作の見どころの一つとなりそうだ。
映画『幸福なラザロ』
公開日:2019年4月19日(金)
監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケル
出演:アドリアーノ・タルディオーロ、アニェーゼ・グラツィアーニ、アルバ・ロルヴァケル、ルカ・チコヴァーニ、トンマーゾ・ラーニョ、セルジ・ロペス、ニコレッタ・ブラスキ
原題:Lazzaro Felice
英題:Happy As Lazzaro
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