2012年10月19日(金)、ジン カトウ(ZIN KATO)が2013年春夏コレクションを発表した。テーマは「OKHORSK FANTASY(オホーツク ファンタジー)」。
根室に生まれ、オホーツクの海に浮かぶ北方の島々にルーツを持つデザイナーの加藤徹にとって、すぐ目と鼻の先にありながら足を踏み入れることのできないタブーの地であったクナシリ。2009年と2010年に、そのクナシリとエトロフでのファッションショーを行った彼は、島で暮らすロシアの人々との交流、モデルを務めてくれた現地の少女たちの無垢な美しさ、そして手つかずの雄大な自然などに大きな感銘を受けたのだという。
そして生まれたコレクションのキーワードは「共生」。以後、非言語コミュニケーションのツールとしてのファッションで伝えたいと、一貫して追求し続けてきたテーマである。
小鳥のさえずりとともに、朝日のようにライトがランウェイを照らし出し、ショーがスタート。淡く繊細なトーンが交じり合う、花の刺繍やレースで彩られたドレスは、野生の花々の持つ純粋な美しさと強さを湛えている。それは、女性のボディラインからつながる優雅なシルエットによって、一層可憐さを増した。
後半の造形的なドレスは、フリルやタック、構築的な仕立てによって、巧みに形づくられた。長いトレーンを持つドラマティックなフォルムは、母なる大地の持つ豊かさのイメージに重なっていく。
ショーの直後、「北方四島方々が観に来てくれたことが、このショーの意義でもあります」と、感慨深げに語った加藤。彼はこれからも生涯のテーマとして「共生」を訴え続けていくという。