2012年10月20日、リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)が、7番目となる2013年春夏コレクションを発表した。タイトルは「THE SEVEN GODS - clothes from chaos - 」。これは、昨年の東京オペラシティギャラリーでの「感じる服 考える服」展で始まった物語の最終章だ。
究極の衣服を求め、ファッションデザイナーとなったアダム浦島は、究極の衣服が作れず苦悩の日々を送っていた。作っても作っても、人々には到底理解されず、売れることのない服たち。そして彼は、最後の力を振り絞り、渾身の18体を制作し、ついに人生初のファッションショーを開催した。
3部構成のショーでまず披露されたのは、「煩悩とか欲とか、ファッションの瞬間的な強さ」(山縣)をファッションの魅力を様々な要素を瞬間的にミックスすることで表現した18体だ。キーアイテムは熊手。日本の根本的な宗教観に興味を持っているという山縣は、いろいろな幸福をすべて取り込んで合体させた象徴である熊手に日本の本質のひとつを見出し、それを何でもありなファッションとして提示している。
作品をつくりあげたアダムは力つき、第2部で天に召される。天使に運ばれていった彼の元に、最後に「SEVEN GODS」=「七"服"神」が降臨。そしてアダムは服の神様になった。
黄色い彼の服は、「感じる服」展で展示されたお金の生地でつくられている。昔は布そのものがお金と同じ価値があったというファッションの歴史を遡って作られた生地で作られた服が、アダムの死装束になった。それがトレーナーにショートパンツという今ドキのスタイルなのは、ファッションが大好きだったアダムだからこそ。
宗教の儀式のような演出については、「装う力の最大値を出そうとするものが人間の本能的なところにあって、それが昔は儀式などで行われていた。それをファッション的要素で更新してみました」と山縣は語る。
「世の中に答えが出せないというのが本質のような気がしている。ファッションショーは、瞬間的なものを表現するのに一番強い表現方法だと思う。初めて会った人が過ぎ去っていく、人々のファッションを街を行き交っていくような本質が組み込まれているショーは魅力を感じています。この作品を11月のアートフェアに出展します。また違う形でファッションのクリエーションの価値を表現するフィールドをつくっていければいいなと思います。このショーは、今までで一番集中してやりました。2年前に神々のファッションショーをやって、2年経ってまたそれを更新したものが出せたと思っています」(山縣)
ファッションとは何か、その根源までに踏み込んで、寿命が縮むほどの想いで力を出し切った彼の、すがすがしい表情が印象的だった。