マラミュート(malamute)の2020年春夏コレクションが、2019年10月11日(金)に発表された。テーマは「The Restless Waves」。
ここ数シーズン、映画や小説などのカルチャーからインスピレーションを得てきたデザイナーの小髙真理。今季はそれとは異なるアプローチを取り、自分の日常の中にある感覚や感情をすくい上げることからクリエーションをスタートした。
そこで気づいたのが、アウトドアの日の爽快感と、インドアの日に1人で過ごすリラックスしたムード、この2つを行き来することで生まれるそわそわとした落ち着かない感覚だ。この感覚を、どこまでも開放的な海と、人々の生活の場でもある陸、その境界にある波にたとえて、コレクションテーマを「The Restless Waves」と設定した。
メインモチーフとなるのは波。アウターのバックスタイルにはラッフルをあしらいフレアシルエットを生み出して、スカートの裾にはいくつものカッティングを施して、モデルが歩くたび寄せては返す波のようにゆらゆらと揺れ動くディテールを生み出している。ブランドが得意とするニットのトップスには、うねりのある波形のマルチストライプを走らせた。
マテリアルには、ロングワンピースに採用したキュプラのチェック柄オリジナルジャカードや、特別な加工を施すことによってナチュラルなシワ感を表現したレーヨン混のツイル素材などを起用。いずれも再生繊維を使用した環境に配慮した素材だ。
またスポーツ素材で編み込んだ高伸縮のシースルー素材トップスも目を惹いた。このタイトフィットのスキンカラーキャミソールは今季を象徴するアプローチの1つである無縫製で仕上げたもので、スポーティーな要素と人肌のように柔らかなムードが同居している。
キーカラーはグリーン。ジョルジュ・デ・キリコの絵画『愛の歌』が持つ違和感にインスパイアされ、絵の中に描かれているボールの緑色をカラーパレットに取り入れている。その他にもセルリアンブルーやホワイトなど太陽光が差し込んでいるかのような爽快感のある色や、ベージュやブラウンといった曇りや雨の日の土臭さをイメージした色を採用。様々なカラーを絶妙に織り交ぜて、コレクション全体に繊細なグラデーションをもたらした。
今シーズンは演出にもこだわり、コレクションに通ずる感情のざわつきを表現している。会場である東京・北青山の京都造形芸術大学 外苑キャンパスには、空間に歪みを生み出すかのような吉添裕人による真っ黒な球体インスタレーションを設置。音楽はショー開始直前までアコースティックな音色のライブパフォーマンスでリラックスしたムードを演出したが、ショーミュージックには様々なノイズがリミックスされた緊張感のある音楽を起用した。