ノブユキ マツイ(Nobuyuki Matsui)の2020年春夏コレクションが、2019年10月16日(水)に発表された。
今シーズンのテーマは「水鏡」。鏡の存在しない時代、自分の容姿を確認できる唯一のものであった水面。デザイナーの松井信之は、そんな自然が作り出す鏡に想いを巡らせつつ「水の反射が服をどのように映し出すのか?」という発想からクリエーションをスタートさせた。
コレクションでは、素材、模様、カッティングなどあらゆるアプローチで水鏡が洋服を映し出す様子を落とし込んでいる。たとえば、ジャケットにはキラキラと水に光が反射する姿を連想させる艶やかな素材を採用。シャツ&ハーフパンツのセットアップには、水鏡の上でぼやけてしまったようなマーブル模様を施した。ジャケットやシャツの裾は、ゆらゆらと揺れ動く水面を反映したかのように歪みをはらんでいる。
カラーパレットは、水を彷彿とさせるブルーが主流。深いネイビーのコートや淡い水色の模様をあしらったハーフパンツ、鮮烈なブルーのワイドパンツなど様々な青を組み合わせることによってコレクションに奥行きを生んでいる。藍染によるデニムジャケットやパンツも、今シーズンを象徴するアイテムの1つだ。
ガラスボタンは、ブランドのこだわりである一点物のパーツ。北海道の洞爺湖でガラス作品を制作しているアーティスト・高臣大介に依頼をし、特別に製作されたものだ。会場には、今シーズンのメイン・インスピレーションにもなった冬の泉を彷彿とさせる高臣によるインスタレーション「野傍ノ泉池(のぼうのせんち)」も展開した。
このガラス作品がぶつかり合うことによって生まれる美しい音色も、演出の1つに。音楽作家Kaito Sakuma a.k.a BATICが「オフィーリア」に着想を得た立体音響作品を使ったライブパフォーマンスと共に、会場に響き渡っていた。
目線を下に落とすと、フロアには廃棄処理される予定だった衣類を藍染し、繋ぎ合わせることによって作られたカーペットも敷かれており、会場全体でシーズンテーマである「水鏡」を表現した。