ラッド ミュージシャン(LAD MUSICIAN)は、2025年春夏コレクションを2024年9月11日(水)に恵比寿のザ・ガーデンホールにて開催。バンドのsyrup16g(シロップ16g)がライブ演奏を披露し、ショーの音楽を担った。
ラッド ミュージシャンがブランドのデビューを飾った1995年4月20日からちょうど“10,738日目”、ショーを終えたデザイナーの黒田雄一は、「気が付けば1万日以上も(ブランドを)やってきて、すごいなと思った」と振り返った。
ショー形式でコレクションを発表するのは実に10年ぶり。最初の20年間は継続的にショー形式で披露してきたものの、20周年を迎えた2015年春夏コレクションを最後に、ここ10年の間は展示会での発表に切り替えていた。30周年の節目、久々にショーをやろうと思った理由については、ラッド ミュージシャンのお客さんに何か返そう、と思ってのことだという。
ショーの幕開けはsyrup16gの「正常」。syrup16gの歌詞が好きだと話す黒田は、その内省的な歌詞の世界観と、ショー発表を行わなかった10年の間で徐々に内省的になっていったと振り返る自身のクリエーションを重ね合わせた。今季は全体的にブラックを中心に、ダークトーンのグリーンやネイビー、パープルなどで覆われており、深く内面を掘り下げていくようなイメージと暗い色味をリンクさせている。
たとえば、静かな光沢を備えたライダースジャケットのセットアップや、揺れ動くドレープが余韻を残していくワイドパンツなどのエレガントなピースから、オーバーサイズのデニムジャケットやトラックジャケットといったカジュアルなアイテムまで、多数のアイテムがオールブラックで提案された。また、花々を繊細に描いたパンツやシャツは影のかかったような奥行きのある色味に仕上げ、バラが大きな花を咲かせるプリントのシャツやジャケットはひんやりとした青を効かせて詩的に表現されている。
また、深くかぶるフードも目を引いた。顔を覆い隠し、視界を確保するために細かい穴をあけたフードや、両目の部分に穴をあけたフードを配したパーカーは、ぐっと自分の内面を省みる時のナイーブさを感じさせた。一方、まるでストールのような曲線を描くフード付きのパーカーは、首から頭にかけて緩やかに包み込み、どこか安心感を漂わせている。
ナイーブさと同時に、「若いときと感覚が変わっていない」と話すデザイナー・黒田の感性も随所に見受けられた。ジャケットにTシャツを合わせたスタイリングや、ボタンを開け、着崩すようにしてまとったしなやかなシャツ、フレッシュな輝きを放つラインストーン付きのニットを軽快に着こなしたルックなど、若さから派生する繊細さやきらめき、そしてある種の粗さ、大胆さを備えた佇まいが印象的だ。
シルエットはバラエティに富んでおり、トップスはドルマンスリーブのゆったりとした5分袖スウェットやからコンパクトなショートジャケットまで、ボトムスなら裾にたっぷりと分量を持たせたワイドパンツから、スキニーパンツまで、多様なシルエットが共存している。ただ、いずれも佇まいになじむように設計されており、トレンチコートやテーラードジャケットなどのかっちりしたアイテムはジャストなフィットに仕立てる一方、ラフなトラックジャケットはボリュームを持たせたシルエットに仕上げるなど、装いのイメージに添うような造形が採用されていた。
フィナーレには、未来の象徴ともいえるドラえもんとのコラボレーションアイテムが登場。2002年春夏コレクション以来となる今回のコラボレーションでは、新柄のグラフィックを中心にTシャツやバッグなどを展開する。アイコニックな存在であるドラえもんにラッド ミュージシャンならではの観点からクールに表現しているのが特徴だ。繊細なペンのタッチにフォーカスし大判で表現した線画のグラフィックTシャツや、シューゲイザースタイルで後ろを向いてギターを弾くドラえもんやのび太をポイントで配したTシャツなどがショーの最後を飾った。