コッキ(KHOKI)は、2025-26年秋冬メンズコレクションを2025年2月12日(水)に東京・五反田で発表した。
会場に足を踏み入れると、床には落ち葉がこんもりと積もり、薄い霧が暗闇の空間を包み込んでいる。観客は落ち葉の上に座り、無数の落ち葉をかき分けた小道がランウェイになっていた。一方で、自然を感じる演出とは対照的に、あたりを照らしていたのは無機質な蛍光灯の照明だった。そこは、人の手で作られた森の中だった。
「人の手が見えること」こそが、コッキのクリエーションにおいて重要な要素。今季特に目を引いたのは、“付け加えられた装飾”だ。象徴的なのは、枯れ葉のようなパーツを幾重にも折り重ねたトップス。装飾の立体感と無数に伸びる紐の躍動によって、有機的な佇まいを見せている。
レースやパールなどの華やかな装飾パーツが、まるで人工の森を照らす蛍光灯のように異質な輝きを放っていたのも印象的だ。赤いTシャツにはまるで影が浸食するかのように黒いレースが広がり、足跡を残すように点々とパールがその輪郭線を辿る。
また、サテンのジャンプスーツには、偶発的に寄せ集められたかのようなギャザーと不均一に並ぶパールによって、ブラックホールを思わせる円を描き出した。さらに、タフなデニムパンツには内部のポケットが透けたレースのハーフパンツを重ね、無骨な素材で仕立てたトレンチコートには、幾何学的な模様が連なるエンブロイダリーレースの袖を組み合わせている。
加工による表情豊かな風合いも特徴的。レッドのコートやフーディー、グリーンのパフィジャケットはところどころ色褪せたように仕上げ、長く時を経て風化したかのような質感を生み出した。また、唐突に異なる編地を挟み込んだニットカーディガンにはダメージを加えることで、退廃的な佇まいに仕上げている。
その一方で、シャツの絵柄やパフィジャケットに施された刺繍のモチーフはどこか牧歌的。童話に出てくるような家が立ち並ぶ風景や、動物たちが飛んだり跳ねたりしている様子をカラフルに表現しており、チャーミングな遊び心をのぞかせている。
シルエットで注目したいのは、たっぷりと生地を用いたワイドパンツ。腰周りから裾までダイナミックに分量感を持たせたパンツや、タックギャザーによってエレガントなドレープを刻むセットアップのボトムスなど、いずれも重心を下にとることで、抜け感のある佇まいを生み出している。ふんわりと空気を含むような六分丈のパンツや裾に向かって広がるフレアシルエットのレザーハーフパンツは、ボリュームがありつつも軽快さを見せていたのが印象的だ。