ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)の2025年秋冬メンズコレクションが発表された。
2025年春夏メンズコレクションを最後に創業者ドリス・ヴァン・ノッテンが退任したのち、新たにクリエイティブディレクターに退任した、ジュリアン・クロスナー。2018年にブランドに加わったクロスナーは、創業者ドリスとともに、ウィメンズのデザインに携わってきた。今季は、ドリス ヴァン ノッテンのスタジオ・チームがデザインし、クロスナーがディレクションを手がけたシーズンとなる。
着想源となったのが、アメリカの小説家ウィリアム・S・バロウズの『ワイルド・ボーイズ』と、同作をもとに監督ベルトラン・マンディコが手がけた映画作品だ。物語の舞台となった20世紀末の退廃性や、セクシュアリティの流動性など、両者の作品を包みこむ雰囲気を反映させつつ、ヨーロッパの男性服を現代の視点から捉え直したコレクションを展開している。
軸となったのが、テーラードジャケットやトレンチコート、フロントにエプロンをあしらったマリンパンツなど、男性のユニフォームとでも言えるウェアの数々。とはいえそれらは、シルエットや素材をアレンジすることで、タフで屈強な佇まいを払拭し、むしろ退廃的で官能的、中性的な雰囲気を織りなしている。
たとえばテーラードジャケットやロングコートを見れば、スリーブはヨーロッパのドレスのジゴスリーブを彷彿とさせる、立体感あるボリュームが特徴。肩幅は些かシャープに、丈感は長めに設定したシルエットは流れるよう。裏地にはしばしば、伝統的には女性服に用いられてきた、起毛感ある織りでモチーフを表したファブリックをも取り入れている。
退廃的で中性的──それは、ウェアをかたち作る素材にも色濃く見てとれる。トレンチコートには、艶かしい光沢を帯びた、起毛感のあるカウレザーを。時には、あたかもドレスに用いられるような、ハリと光沢を持ったファブリックを。量感あるコクーンシルエットのコートには、色とりどりの色糸を織りこんだ、奥行きのあるツイードを。あるいは、図案化された花柄を思わせる総柄を、きらめきを帯びた織りで表現したロングコートからは、濃密な退廃性と色気を感じられる。
ドリス ヴァン ノッテンならではともいえる緻密な装飾技法も、退廃的で官能的なコレクションの雰囲気に寄与している。くすみを帯びたピンクのトレンチコートには、朧げな花の姿を取り入れ、その上にビジューの刺繍を施す。シャツやコートばかりでなく、自在に取り外しのできるシャツカフスやシャツカラーにも、華やかなビジュー装飾を取り入れ、コーディネートに色気あるきらめきを加えた。