ディオール(DIOR)のフォール 2022 メンズ コレクションが発表された。
ロンドンで開催されるメンズ初のショーとなった今季。その着想源となったのは、20世紀アメリカの作家・詩人であるジャック・ケルアックだ。カウンターカルチャー的な性格をもつ文学潮流「ビート・ジェネレーション」を代表するこの作家に共鳴するようにして、メゾンのクチュールと伝統に、アメリカのスポーツウェアがもつカジュアルさを交差させてゆく。
メゾンを象徴するテーラリングが光るジャケットは、端正なシルエットはそのままに、カジュアルなムードに。グリーンとイエロー、レッドとブラウンといったように、クラシカルながらも色鮮やかなチェック柄で華やぎを加えた。あるいはコートも、柔らかな質感をバイアスカットで仕立てることで、しなやかな佇まいを漂わせた。
温かみのあるフェアアイルニットであっても、エレガントさとカジュアルさの巧みな交錯の例に漏れない。カジュアルな織り柄は緻密さを極めるとともに、スパンコール刺繍がニットの温かみにメタリックなきらめきを添えている。カラーも、ブラウンといった落ち着いた色みにとどまらず、溌剌としたオレンジやイエロー、あるいはヴィヴィッドなブルーやグリーンなど、ニット独特のリラックス感あるムードを払拭するかのような目の覚める印象を与える。
パンツは、デニムも幅広く見られるのが特徴だ。ウォッシュド加工でカジュアルさを強めつつも、スラックスのようにセンタープレスを施し、上品さを漂わせた。もちろんデニムは、アメリカを象徴する生地だがが、それがフランスに起源を有するという点で、コレクションの性格をも特徴付けているといえる。