ミュベール(MUVEIL) 2020年プレフォールコレクションのテーマは“In The Mood for Love”。着想源となったのは、1960年代の香港を舞台にした、ウォン・カーウァイ監督の恋愛映画『花様年華』だ。
イギリス統治下に置かれていた1960年代の香港。西洋の文化が入れ混じるその街で、禁断のラブストーリーを描いた『花様年華』は、ファッショナブルな世界観でも話題を集めた一作だ。仕立ての良いスーツをダンディに着こなす主人公に、艶やかなチャイナドレスが印象的なヒロイン。今季は、そんな登場人物たちが紡ぐストーリーに想いを馳せ、東洋×西洋が絶妙にミックスされたエレガントな女性像を描き出していく。
物語の舞台である香港のテイストは、チャイナ風ディテールをふんだんに取り入れることで表現。独特のスタンドカラーに、斜めへと伸びる前合わせ、チャイナボタンといった伝統衣装の要素が、現代のワードローブと時代を超えて交じり合っていく。またターコイズブルー、マスタードイエロー、パープルといった鮮やかな色彩も相まって、ワンピースやジャケット、トップスといったピースは、オリエンタルなムードを強めている。
物語の登場人物たちをミューズにしたアイテムも登場。真っ青なテキスタイルに、艶やかなフラワープリントをのせたワンピースは、ヒロインのチャイナドレスの絵柄からヒントを得たもの。ふんわりと膨らむクラシカルなパフスリーブを取り入れて、東西の文化をバランスよく表現している。
一方艶やかな光沢が目を惹く、幾何学模様のジャガードワンピースは、主人公の身に着ける“ネクタイ”柄にインスパイアされた。本来はマニッシュな絵柄も、こっくりと奥深いグリーンカラーと溶け合うことで、秋にぴったりなレディな装いを助長してくれる。
ミュベールらしい刺繍にも、東洋のエッセンスを取り入れて。キャミソールドレスや、セットアップジャケット、ロングドレスといったアイテムには、真っ青なフェニックスのモチーフをオン。そのゴージャスな羽根には、きらりと輝くビジューもあしらわれている。