ハルノブ ムラタ(Harunobu Murata)の2020年秋冬コレクションが、イタリア・ミラノで発表された。ブランドのデビューから1年、2度目のミラノ・ファッションウィークへの参加となる。
今シーズンのインスピレーション源になったのは、陶藝家・瀬川辰馬の作品。瀬川が生み出すモダンな器の静謐なフォルムや質感、色彩をコレクションに落とし込むことで、気品あふれる女性像を描き出す。プレゼンテーションに登場したモデルのウエストには、瀬川がこのために特別に製作した作品がアクセサリーとしても用いられている。
アイテムはロングコートやテーラードジャケット、ワイドパンツなど様々だが、共通するのは瀬川の陶器を彷彿とさせる洗練された佇まいだ。ルーシー&ルーク・メイヤー夫妻が手掛けるジル サンダー(JIL SANDER)などで経験を積んだデザイナー村田晴信が得意とする、クリーンでシンプルなカットが存分に生かされている。
一見するとミニマルだが、ロング丈のシャツやワンピースには深いスリットが入っていたり、ワイドパンツは布が優美にたゆたうようにボリュームが設計されていたり。今シーズン初登場したダウンジャケットは、クチュールシェイプを意識したシルエットで、羽織る人の姿勢を美しく見せてくれる。
デザイナー村田が「ポケットに手を入れて佇んでいる女性をイメージしながら、女性の姿勢や仕草、今季は特に佇まいを意識してデザインした」と語るように、この美しいシルエットは洋服を纏う人がいてこそ本領を発揮する。
テキスタイル選びにも、今季のテーマを反映。光沢感とシワ感を備えたサテン風ファブリックや、レザーのような質感のボンディングしたウールビスコースなど、様々な表情を織り交ぜることで、陶器が持つ独特の風合いを表現している。またクラフトマンシップを感じさせるディテールとして、生地の糸を抜いたり、ほつれさせたりして、温かみのある手仕事の痕跡を残した。
カラーパレットは、陶器をつくるプロセスからインスピレーションを得たブラウンをメインに。グレーやホワイトも色調を絶妙に調整し“土っぽい”ニュアンスが出るように設計している。瀬川が得意とする美しいブルーの色合いは、アクセントカラーとして投入した。
スタイリングのアクセントとして取り入れられた構築的なフォルムのバッグは、自立するデザインがポイント。携えるときだけでなく“置いた”時にも美しいバッグをデザインしようという発想を起点に、メタリックなオリジナルの金属パーツを施したスクエア型のバッグを完成させた。ストラップを駆使することでショルダーバッグやクロスボディバッグとして使うことができ、実用性にも優れている。