エボニー(EBONY)2020年秋冬コレクションが発表された。
日常に溢れる“何気ない風景”を見つめ直すことからスタートした今季は、デザイナーの目に留まった野性の花々がシンボリックなモチーフに。“花柄=フェミニン”という従来のイメージを払拭し、素材やプリントでアレンジをきかせたフラワーモチーフが、テキスタイルの上へと咲き誇る。
例えばマニッシュな素材とフラワーモチーフを組み合わせたピース。紳士用のスーツ地で仕立てたジャケットやワンピースには、テキスタイル一面に“菊の花”の刺繍があしらわれた。もともとの素材を覆い隠すように細かく入ったその刺繍は、独特のハリ感が加わり立体的なフォルムを演出。また植物のエネルギッシュなムードを抑えたシックな黒糸が採用されることで、秋冬らしいシックな表情を描き出している。
デザイナーが和歌山の海で見つけた“アツバキミガヨラン”は、純白の花びらを持つ昼間の“ピュアな表情”とは裏腹に、夕暮れ時になると鋭利な葉が不気味に映える植物。艶やかな光沢をもつブラウスやワンピースには、そんな植物の特徴的なパーツを強調して描いたあと、ランダムな箔加工を施すことで、自然界のワイルドな側面を引き出している。
道路側にひっそりと咲くケイトウを、あえて主役に選んだワンピースも。柔らかなウールのハイゲージニットに、光沢を放つ膨れジャカードで表現したケイトウは、力強さと華やかさを同時に放つ。私たちが日常で見逃してしまいがちな美しい風景が、“誰かの記憶に残る”洋服として新たな価値を宿している。
こうしたフラワーモチーフの柄物と同時に展開されたのは、マニッシュな表情が印象的な無地のジャケット。ミニマルなデザインの分、アレンジを加えた着こなしを楽しめるのが特徴で、付属のベルトでキュッとウエストを絞ってみたり、アームを取り外して“ベスト”風にレイヤードしてみたり、女性らしい襟抜きスタイルを楽しめたり…と、日常のコーディネートの幅を広げる多彩な提案が行われている。
パレットは、ピンク、グリーン、深いグリーン…と、季節の移ろいを感じさせるカラーで構成。秋冬らしいニットウェアは、ウール糸をベースに、全面キッドモヘアを加えることで、糸と色の見え方に変化を加えている。