リーダーが目線を合わせてくれると現場が盛り上がると思います。
山本:ファッションに限らずどんな仕事でも、続けていくことは大変だし辛い。目標を設定したり、達成感のポイントを見つけて進んでいくしかないのはわかっていても、実際のところ、仕事って耐え難く暗い部分もあります。
ファッションは、表向きは華やかですが、日々の仕事は神経を張りめぐらせているのでシリアスになりやすい。何かしら笑って、せめて明るい雰囲気の中で働いてもらえるといいかなと思って。自分で見聞きしてきた面白い話をわざと大きな声で話をして盛り上げています。
日本の今の街中を見ていて、ファッションに思うことは?
山本:つい目で追ってしまうような、魅力的な着こなしをしている人が少なくなったかもしれません。以前に比べて、はっと振り返るような人がいなくなったような気がします。
変わってないなと思うのは、皆似たような恰好をしていることですね。流行を追いたい気持ちを否定するわけではないのですが、同じスタイルばかりだと残念だな、と思います。価格が少し高くても丁寧に作られた服と、ファストファッションと呼ばれる服の違いを肌で感じてほしいですね。何より今は、服が消耗品と化していることが悲しいです。
もっと私自身が力をつけて、良い服を世の中に送り出し、「服は消耗品ではない」ということを示していきたい。フードロスと同様、ファッション業界でも廃棄物や環境への配慮が世界中で提議されていますが、質の良い物を適正価格で出すことがまず大事なのではないかと思います。
最近、「サステナブル」がファッション業界のキーワードになっていますが、関心はありますか。
山本:関心はありますが、たとえばオーガニックコットンを使う方が環境に良いのかと言われると、疑問に感じる部分もあるというか……。というのも実際には、オーガニックコットンの方が油を多く使っていたりするからです。
イメージ戦略として「サステナブル」を打ち出すこと自体は良いと思いますが、それぞれの企業や個人が何をできるのかをまず考えるべきかな、と。
私は「サステナブルやります!」という宣言が苦手なので、そっと実行して行ければいいと思っています。リミ フゥとしても、店頭ラッピングの一工程にあったビニール袋の使用を中止するなど、できるところから始めています。個人的には、コンビニ袋や小さくなった子供服の再利用など、日常の小さなことから継続するようにしています。各個人が1つ1つ身の回りのものに責任を取っていくことが重要ではないかと思います。
近年オンラインでの販売が浸透したことで、ファッションの販路が変化しました。リミ フゥもオンライン販売を行っていますが、販売形式については今後どのようにしていきたいですか。
山本:24時間、世界中のお客様に服を提供する手段として、オンラインストアは良いと思います。ただ私としては、販売スタッフを通じて、人から人への繋がりが見える環境で服を提供していくことを、引き続き大切にしたいと思っています。
実店舗とオンラインストアが協力し合い、より多くのお客様に服を届けられることが理想ですね。
最後に、リミ フゥの今後の展望をお聞かせください。
山本:スタッフが楽しく仕事ができれば、それだけで充分です。
ブランドを大きくしていきたいという気持ちはもちろんありますが、私は自分の目の行き届く範囲をキープしたいという気持ちもあります。量を求めると質が落ちるので、それならば現状を維持したまま良質な服を作ってきたいと考えています。
お話していて思うのですが、この考えは経営者向きではないですよね(笑)。私としてはスタッフ全員が思いっきり笑って働いて、良いものが作れれば、それ以上に望むことはありません。