アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen) 2020年プレフォールコレクションが発表された。
英国のアール・ヌーヴォー様式の美術や工芸品に着想を得た今シーズンは、その西洋美術に宿る控えめな優雅さやシンボリックなモチーフをコレクションの中へと落とし込んだ。本来エッジイな要素の強いハーネスは、ツイストをきかせたカッティングと刺繍を組み合わせることで、まるで建築の一部を見ているかのようなアーティスティックな表情に。またアール・ヌーヴォ―のスケッチに着想を得たアートプリントは、ラッフルをたっぷりとあしらったフェミニンなドレスの上へと姿を現した。
英国の伝統を受け継ぐ、ツイードを多用したピースにも、今季ならではの“ツイスト”を加えて。英国製ドネゴールツイードで仕立てたダブルブレストのコートは、上品なコールブラック×フレイントグレーの配色を組み合わせながら、ラペルとウエストをくっきりと強調。
一方、ドネゴールツイードを使用したコクーンコートは、シフォンにハンドカットを加えることで、鮮やかな花びらを重ね合わせたような表情に仕上げているのが印象的。ボリューミーなシルエットな分、足元はすっきりとしたロングブーツで引き算することで、スタイリッシュなムードへと引き寄せている。
モデルの足もとを飾るレザーブーツやハイヒールサンダルは、今季ゴールドに輝くメタルバーストラップがシンボリックに起用されていた。そんなディテールと呼応するようにして登場したのは、煌くゴールドチェーンの装飾。温もり溢れるクリーム色のケーブルニットやジャンパードレスには、その網目模様に沿うように繊細なチェーンをあしらうことで、ラグジュアリーなムードへと昇華させている。
メゾンの得意とするクチュールドレスには、アール・ヌーヴォーを連想させる、波状のアイリス刺繍でロマンティックなムードをプラス。シルクサテンやチュールを贅沢に使用した美しきイブニングウェアが、ブランドの描く夢の世界へと導いていく。
また今シーズンの特徴的な要素であった“アシンメトリー”なシルエットを起用したジャカードドレスも登場。バイアスカットされた裾、サイドに寄せられたウエスト部分、大胆にカッティングが入ったスリーブと、挑戦的なディテールを含みながら、メゾンならではの絶妙なバランスで、確かなエレガンスを感じられる一着に仕上げている。